糖尿病合併症⑥糖尿病と心筋梗塞・狭心症のリスク|つねだクリニック|伊丹市鴻池の内科・糖尿病内科

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糖尿病合併症⑥糖尿病と心筋梗塞・狭心症のリスク|つねだクリニック|伊丹市鴻池の内科・糖尿病内科

糖尿病合併症⑥糖尿病と心筋梗塞・狭心症のリスク

糖尿病と心筋梗塞・狭心症のリスク

糖尿病は「血糖の病気」と思われがちですが、実は「血管の病気」でもあります。心筋梗塞や狭心症は糖尿病の重大な合併症のひとつであり、日本循環器学会と日本糖尿病学会の合同ガイドライン(2023年版)では、糖尿病患者の冠動脈疾患リスクは非糖尿病者の2〜3倍とされています。特に血糖・血圧・脂質の管理が不十分な場合、冠動脈が詰まりやすくなり、突然の心臓発作を引き起こす可能性もあります。この記事では、糖尿病と心筋梗塞・狭心症の関係、症状、予防対策について詳しく解説します。

動脈硬化の進行が招く冠動脈疾患

糖尿病では血中のブドウ糖が高い状態が続くことで、血管の内皮細胞が障害されて炎症化が慢性化します。これによりLDL(悪玉)コレステロールが酸化され、血管内にこびりつきやすくなり、動脈硬化が急速に進行します。この動脈硬化が心臓に酸素と栄養を運ぶ冠動脈に起こると、血流が妨げられて胸の痛みを生じる「狭心症」や、血流が完全に途絶えて心筋が壊死する「心筋梗塞」に発展します。糖尿病患者の約50%が心血管疾患で命を落としています。

また、糖尿病患者は神経障害も抱えていることが多いため、狭心症や心筋梗塞特有の胸痛を感じにくく、「無痛性心筋梗塞」として発見が遅れることもあります。そのため、糖尿病の方は自覚症状に頼らず、定期的な検査による早期発見が大切です。

参照:「Diabetes and cardiovascular disease: A consensus report」(Lancet Diabetes Endocrinol, 2020)

狭心症・心筋梗塞の症状に注意

狭心症では、労作時(歩行・階段昇降など)に胸の中央部が圧迫されるような痛みが数分間続くのが典型的です。痛みは肩、腕、顎、背中に放散することもあります。

心筋梗塞では、強い胸痛が10分以上続き、冷や汗、吐き気、呼吸困難を伴うこともあります。特に早朝や深夜に突然発症することが多く、迅速な救急対応が命を救うカギとなります。

無症状で進行する場合もあるため、少しの違和感でも軽視せず、医療機関に相談することが推奨されます。

糖尿病性心疾患の予防と対策

糖尿病を持つ方が心疾患を予防するには、生活習慣の見直しと、医療機関による定期的な心電図検査や頸動脈・心エコーでのチェックが不可欠です。

薬物療法としては、以下が推奨されます:

  • SGLT2阻害薬(例:エンパグリフロジン)は心不全予防に有効(EMPA-REG OUTCOME試験)
  • GLP-1受容体作動薬(例:セマグルチド)は心血管イベントを減少させる(SUSTAIN-6試験

予防は、日々の選択の積み重ねです。医師と相談しながら、自分に合った管理法を見つけましょう。

トリプルコントロールと禁煙の徹底

血糖・血圧・脂質の「トリプルコントロール」は心疾患予防の基本です。下記を目標としましょう。

  • 血糖(HbA1c <7.0%)
  • 血圧(<130/80 mmHg)
  • LDLコレステロール(<100-120mg/dL)

また、喫煙は心疾患の大きなリスク因子であり、禁煙は最も重要な対策のひとつです。禁煙は、心筋梗塞リスクを50%以上減少させるというデータもあります(JACC, 2018)。「たった1本のタバコが血管を10分間痙攣させる」という研究結果(Circulation, 2004)もあり、これは毎日の喫煙がどれほど心臓にストレスをかけているかを物語っています。

食事と運動のバランス

バランスの取れた食事は血管の健康を守る第一歩です。「医食同源」と言われるように、心臓と血糖を守るには食事の見直しが欠かせません。

  • 食事:地中海食(野菜、魚、オリーブオイル中心)が動脈硬化の予防に有効(PREDIMED試験)
  • 運動:週150分の有酸素運動(ウォーキングなど)が心血管リスクを低下(ADA, 2023)

当院では、医師・管理栄養士・看護師がチームでサポートし、無理なく続けられる運動・食事の提案を行っています。

心疾患のリスクを早期に発見するには

糖尿病患者の心疾患リスクを評価するためには、以下のような検査を定期的に行うことが推奨されます:

  • 心電図
  • 心エコー検査
  • 頸動脈エコー
  • 血液検査(BNP、トロポニンなど)

特に症状のない方でも、糖尿病の罹患歴が長い方や、高血圧・脂質異常症を合併している方は、年1回以上の検査が望まれます。また、冠動脈CT検査は、症状がなくても“隠れ狭心症”を見つけるのに有効です。

家族と共有したい心筋梗塞のサイン

糖尿病の方が無症状で心筋梗塞を起こすこともあるため、家族と以下のようなサインを共有しておくことが大切です:

  • 顔色が悪い・冷や汗をかく
  • 胸の違和感や圧迫感を訴える
  • 動悸・呼吸が乱れる
  • いつもと様子が違うと感じたら救急対応を

このような症状が出たら、ためらわず救急車を呼ぶことが、命を守る鍵になります。

まとめ

糖尿病と心筋梗塞・狭心症は深い関係があり、血糖管理に加えて、血圧や脂質、禁煙、食事運動など包括的な生活改善が予防には不可欠です。当院では、伊丹市・川西市・宝塚市・池田市・尼崎市などから多くの患者様が来院され、心疾患の早期発見と予防に取り組んでいます。少しでも胸の違和感を感じたら、早めに医療機関にご相談ください。

(文責:つねだクリニック院長 常田和宏)