糖尿病合併症③「糖尿病性網膜症」とは?失明を防ぐために知っておきたいこと|つねだクリニック|伊丹市鴻池の内科・糖尿病内科

〒664-0006 兵庫県伊丹市鴻池6-2-3
072-744-5513
WEB予約 WEB問診
ヘッダー画像

ブログ

糖尿病合併症③「糖尿病性網膜症」とは?失明を防ぐために知っておきたいこと|つねだクリニック|伊丹市鴻池の内科・糖尿病内科

糖尿病合併症③「糖尿病性網膜症」とは?失明を防ぐために知っておきたいこと

「糖尿病性網膜症」とは?

糖尿病性網膜症は、糖尿病の三大合併症の一つであり、進行すると視力の低下や失明を招くことがある深刻な目の病気です。高血糖状態が長く続くことで、目の奥にある網膜の細い血管が傷つき、出血やむくみ、新しい異常な血管の形成が起こります。網膜は視力に直結する重要な器官であり、その障害は日常生活に大きな支障をきたします(参考:日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2023」)。

糖尿病性網膜症の3つのステージと進行メカニズム

糖尿病性網膜症は、進行度により以下の3段階に分類されます:

  • 単純網膜症:毛細血管に微小な出血や膨らみが見られますが、自覚症状はほとんどありません。

  • 前増殖網膜症:血流障害や血管の閉塞が見られ、視力低下のリスクが高まります。

  • 増殖網膜症:網膜が酸欠状態になることで新生血管が形成され、これが出血や網膜剥離を引き起こす原因となります(参考:日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2023」)。

視力低下の原因|血管障害から視覚障害へ

糖尿病による高血糖状態が網膜の血管にダメージを与えることで、血流障害が生じます。酸素や栄養が届かなくなると、網膜は新しい血管を作ろうとしますが、これらの新生血管は非常にもろく、破れやすい特徴があります(参考:日本眼科学会「糖尿病網膜症の診療指針2022」)。

網膜出血・黄斑浮腫による視覚障害

新生血管の破綻による網膜出血は、視野の一部が暗くなる、かすむといった症状を引き起こします。さらに、視力の中心である黄斑部にむくみ(黄斑浮腫)が生じると、ものが歪んで見えたり、文字が読みにくくなったりします。特に黄斑浮腫は視力障害の主要な原因であり、適切な診断と治療が欠かせません(参考:日本眼科学会「糖尿病網膜症の診療指針2022」)。

眼科での検査と診断方法

糖尿病性網膜症の多くは、初期段階では自覚症状がありません。そのため、症状が出る前に早期発見するための定期検査が重要です。当院では眼科と連携し、以下の検査を通じて的確な診断を行います(参考:Ministry of Health, Labour and Welfare: https://www.mhlw.go.jp/)。

眼底検査・蛍光眼底造影・OCTによる診断

  • 眼底検査:網膜の出血や白斑、新生血管の有無を観察します。

  • 蛍光眼底造影:造影剤を用いて血管の閉塞や漏れを確認します。

  • 光干渉断層計(OCT):網膜の断層を高精度に撮影し、黄斑浮腫の有無を評価します。

特にOCTは非侵襲的で短時間に検査できるため、糖尿病患者さんにとって重要なモニタリング手段となります(参考:日本眼科学会「糖尿病網膜症の診療指針2022」)。

治療法と進行予防の工夫

糖尿病性網膜症は、進行段階に応じた治療が必要ですが、共通して大切なのは血糖や血圧の適切な管理です。当院では全身管理と眼科治療の両面からアプローチします。

抗VEGF薬・レーザー治療・硝子体手術

  • 抗VEGF薬の硝子体注射(例:アフリベルセプト、ラニビズマブ):新生血管の成長を抑え、黄斑浮腫を改善。

  • レーザー光凝固術:異常血管を焼灼して出血・剥離の進行を予防。

  • 硝子体手術:硝子体出血や網膜剥離に対して行われる外科的治療。

これらの治療は、進行状況に応じて眼科専門医と連携して実施されます(参考:American Academy of Ophthalmology Retina/Vitreous Panel, 2022)。

見え方の変化を感じたら?セルフチェックのすすめ

糖尿病性網膜症は「静かなる失明」とも呼ばれ、症状が出たときには既に重症化していることもあります。日常生活で少しでも視野のゆがみや見えづらさを感じたら、眼科受診を検討してください(参考:日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2023」)。

新聞・スマホでの片目チェック

片目ずつ新聞やスマホの画面を確認し、ゆがみ・ぼやけがないかをチェックすることで、黄斑浮腫などの早期発見につながります。違和感を感じたらすぐに受診することが大切です(参考:日本眼科学会「糖尿病網膜症の診療指針2022」)。

血糖・血圧・脂質の管理が最大の予防策

糖尿病性網膜症の最大の予防は、血糖、血圧、脂質のトリプルコントロールです。当院では糖尿病内科として、これらをバランスよく管理するためのサポートを行っています。

HbA1c・血圧・LDLコレステロールの目標値

  • HbA1c:7.0%未満(個別に目標設定)

  • 血圧:130/80 mmHg未満

  • LDLコレステロール:100 mg/dL未満

これらの数値を継続的に維持することで、網膜症の発症リスクは大幅に低下します(参考:日本糖尿病学会「糖尿病治療ガイド2023」)。

まとめ

糖尿病性網膜症は早期には無症状ですが、進行すると失明のリスクがある重篤な合併症です。定期的な眼底検査と適切な全身管理により、多くの患者さんが視力を維持することが可能です。当院では伊丹市、川西市、宝塚市、尼崎市、池田市から多くの患者さまにご来院いただき、眼科との密な連携体制を整えております。目の異常に気づいたら、どうぞお気軽にご相談ください。

(文責:つねだクリニック院長 常田和宏)