健康診断で肝機能が高いと言われたら?AST・ALT・γ-GTPの見方、原因・再検査を医師が解説
- 2026年10月19日
- 肝機能について

健康診断で「肝機能の数値が高い」「要再検査」と指摘され、不安になったことはありませんか?AST・ALT・γ-GTPが高くなる原因は、お酒だけではありません。脂肪肝、糖尿病や脂質異常症、薬剤、B型・C型肝炎など、さまざまな原因があります。
肝臓は異常があっても症状が出にくい臓器です。症状がないからと放置せず、健診結果を体の状態を見直すきっかけにしましょう。
この記事では、AST・ALT・γ-GTPの見方、肝機能異常の原因、再検査や改善方法について、わかりやすく解説します。
健康診断で「肝機能が高い」と言われたら、まずALTを確認しましょう
健康診断で肝機能異常を指摘されても、その結果だけで病名が決まるわけではありません。まずはAST、ALT、γ-GTPのうち、どの項目がどの程度高いのか、過去にも同じ異常があったのかを確認します。
特にALTは肝臓の細胞が傷ついたときに上がりやすい検査値です。日本肝臓学会は「奈良宣言2023」で、健康診断などでALTが30U/Lを超えた場合には、まずかかりつけ医などを受診することを勧めています。
参考:日本肝臓学会「奈良宣言2023」
ALT 30U/L超は「重症」という意味ではありません
ALTが30を超えたからといって、すぐに重い肝臓病という意味ではありません。これは、肝臓の状態を確認するために受診を考えたい目安です。
大切なのは「なぜ上がっているのか」を確認することです。脂肪肝や糖尿病などの生活習慣病、薬剤(サプリメント含む)、肝炎ウイルスなど、原因によって対応が変わります。
肝臓の病気は自覚症状に乏しいことが多いため、健診で異常を指摘されても受診を後回しにしてしまいがちです。症状がない場合でも、異常が続いているのであれば一度原因を調べておきましょう。
AST・ALT・γ-GTPは何が違う?肝機能の数値の見方
AST(GOT)とALT(GPT)は、主に細胞が傷ついたときに血液中へ増える酵素です。ALTは肝臓との関連が強い一方、ASTは筋肉にも含まれているため、激しい運動や筋トレの後に上昇することがあります。
γ-GTPは飲酒の影響を受けやすいことで知られていますが「γ-GTPが高い=お酒の飲み過ぎ」とは限りません。脂肪肝や胆道の病気、薬剤などでも上昇します。実際の診療では、ALPやビリルビン、血小板数なども確認し、数値の組み合わせや過去の変化から原因を考えます。肝機能の数値は、単独の数字よりも「組み合わせ」と「経過」が重要です。
お酒を飲まない人も注意!肝機能が高い主な原因(MASLDとは?)
40代〜60代で特に注意したい原因の一つが脂肪肝です。特に、肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症などがある方では注意が必要です。
近年、代謝異常を背景に肝臓へ脂肪が蓄積する病気は、MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)と呼ばれています。「脂肪肝=お酒好きの病気」と思われがちですが、 お酒をあまり飲まない方や肥満の方だけでなく、見た目はスリムなのに肝臓だけに脂肪がつく「隠れ脂肪肝」の人も増えています。
MASLDのすべてが重症化するわけではありません。しかし、一部ではMASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)へ進み、肝臓の線維化や肝硬変、肝がんにつながる可能性があります。脂肪肝を指摘されたら、単に「脂肪がついているだけ」と考えず、将来のリスクも確認しましょう。
参考:
日本消化器病学会・日本肝臓学会「MASLD診療ガイドライン2026
EASL-EASD-EASO Clinical Practice Guidelines 2024)
糖尿病・中性脂肪が高い人は脂肪肝にも注意
糖尿病と脂肪肝は、密接に関係しています。2型糖尿病では、インスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」が起こりやすく、肝臓に脂肪がたまりやすくなります。
当院は糖尿病診療を専門の一つとしており、血糖値やHbA1c(過去1〜2か月程度の血糖状態を反映する指標)を確認する際に、肝機能や脂質の状態にも目を向けることが大切だと考えています。
ALTが高い方は、肝機能だけではなく血糖値、HbA1c、中性脂肪、コレステロール、血圧、体重や腹囲も併せて確認しましょう。身体全体の生活習慣病リスクを把握することが、将来の健康を守る第一歩です。
アルコール・肝炎ウイルス・薬剤も原因になります
肝機能異常の原因には、アルコール関連肝疾患、B型肝炎・C型肝炎、胆石などの胆道疾患もあります。また、処方薬、市販薬、漢方薬、サプリメントによる薬剤性肝障害にも注意が必要です。
例えば、アセトアミノフェン(カロナール®など)は過量服用で肝障害を起こすことがあります。また、アモキシシリン水和物・クラブラン酸カリウム(オーグメンチン®など)でも薬剤性肝障害が報告されています。
ただし、薬が原因かどうかは、服用時期や検査値などを踏まえて判断します。肝機能が高いからといって、処方薬を自己判断で中止せず、服用中の薬やサプリメントを医師に伝えましょう。
肝機能の再検査では何をする?何科を受診すればいい?
健診で肝機能異常を指摘された場合は、まず内科で相談していただいて問題ありません。受診時には今回の健診結果に加え、可能であれば過去数年分の結果、お薬手帳、使用しているサプリメントの情報も持参してください。「今年だけ高い」のか、「数年間続いている」のかは、原因を考えるうえで重要です。
再検査ではAST・ALT・γ-GTPに加え、ALP、ビリルビンなどを確認します。必要に応じてHBs抗原やHCV抗体による肝炎ウイルス検査、血糖値、HbA1c、脂質検査なども行います。腹部エコー(超音波)検査で脂肪肝や胆石を確認したり、FIB-4 indexという指標で肝線維化のリスクを評価したりすることもあります。専門的な検査や治療が必要な場合は、消化器内科・肝臓専門医への紹介を検討します。
なお、皮膚や白目が黄色い、強い腹痛や発熱がある、意識がぼんやりするなどの症状がある場合は、通常の再検査を待たず、速やかに医療機関を受診してください。
肝機能を改善するには?脂肪肝は「体重の5%減」が目安
肝機能を改善するために大切なのは、検査値だけを下げることではなく、原因に合わせて対策することです。
MASLDで体重過多がある場合は、食事と運動による無理のない減量が基本です。欧州の2024年診療ガイドラインでは、過体重の方について、5%以上の減量で肝脂肪の減少、7〜10%で肝臓の炎症、10%以上で線維化の改善を目指す考え方が示されています。海外の研究でも、減量が大きいほど肝臓の状態が良くなりやすいと報告されています。
体重70kgの方なら、5%は約3.5kgです。 甘い飲料や過度な間食を減らし、ウォーキングなど継続できる運動から始めましょう。飲酒が関係している場合は、飲酒量の見直しも重要です。
肝機能異常に対して、全員に共通する特効薬があるわけではありません。糖尿病などの基礎疾患がある場合は、その治療も含めて改善を目指します。肝臓に良いとうたうサプリメントを追加する前に、まず原因を確認しましょう。
参考:
EASL-EASD-EASO Clinical Practice Guidelines 2024
まとめ
健康診断で肝機能が高いと言われても、すぐに重い病気を意味するわけではありません。一方で、脂肪肝や慢性肝炎などは症状がないまま進むことがあります。特にALTが30U/Lを超えている方、糖尿病や肥満、中性脂肪高値がある方、肝機能異常が何年も続いている方は、一度原因を確認しておくことをおすすめします。
つねだクリニックは伊丹市にある内科・糖尿病内科・甲状腺内科です。当院の医師は糖尿病を専門とし、肝機能だけでなく、血糖、脂質、血圧、体重など、生活習慣病を含めて総合的に診療しています。
伊丹市をはじめ、川西市、宝塚市、尼崎市、池田市などにお住まいで、「健診結果を一度相談した方がいいかな」と迷われている方も、どうぞ気軽にご相談ください。より専門的な肝臓の検査や治療が必要と判断した場合には、適切な専門医療機関をご案内いたします。
(文責:つねだクリニック院長 常田和宏)