60代・70代に多い病気とは?~健康寿命を延ばすために知っておきたい病気と予防法を医師が解説

60代・70代になると「ただ長生きすること」だけでなく、「旅行に行きたい」「孫と遊びたい」など、元気に自立して過ごせる期間=「健康寿命」を延ばすことが大切になります。
診療をしていると、「孫と元気に遊びたい」「旅行を続けたい」「介護を受けずに暮らしたい」と話される患者さんが多くいらっしゃいます。一方で、高血圧や糖尿病などの生活習慣病を放置した結果、心不全や慢性腎臓病(CKD)、脳卒中などを発症し、生活の質(QOL)が大きく低下してしまうケースも少なくありません。そのため近年は、平均寿命だけでなく「健康寿命」が注目されています。
健康寿命を延ばすためには、病気を治療するだけではなく、「病気を早く見つけて進行を防ぐこと」が重要です。本記事では、60代・70代に多い病気や予防のポイントについて、糖尿病専門医の視点から分かりやすく解説します。
健康寿命と平均寿命の違い
「平均寿命」とは、私たちが平均して何歳まで生きられるかという数字です。一方の「健康寿命」は、介護や誰かの手助けを必要とせず、自分一人で元気に自立して暮らせる期間を指します。
日本では2022年時点で平均寿命は男性約81歳、女性約87歳ですが、健康寿命は男性約72歳、女性約75歳とされ、約9〜12年間は何らかの支援や介護を必要とする可能性があります。つまり、人生のラスト約10年間は、何らかの介護や闘病生活になる可能性が高いということです。
この差を縮めることが、現在の医療の大きな目標です。そのためには、高血圧症・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病を適切に管理し、筋肉量や身体機能を維持することが重要です。
「寿命を延ばす」よりも、「元気な時間を延ばす」という考え方が、これからの健康づくりには欠かせません。
【参考文献】
厚生労働省「健康日本21」
なぜ60代以降で病気が増えるのか?
60代・70代では、長年積み重ねた生活習慣の影響が病気として表れやすくなります。
筋肉量は40歳頃から徐々に減少し、70代では20代と比べて約20〜30%低下するとされています。筋肉が減ると血糖を消費しにくくなり、糖尿病やフレイル(加齢による虚弱)のリスクが高まります。
さらに、血管の老化や腎機能の低下、慢性的な炎症が進行し、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病(CKD)、心不全などが重なって発症しやすくなります。
近年では、これらを一つの病気ではなく相互に関連する「CKM症候群(Cardiovascular-Kidney-Metabolic Syndrome)」として総合的に管理する考え方も広まっています。
そのため、この年代では「症状がないから大丈夫」ではなく、定期的な健康管理が重要になります。
【参考文献】
日本老年医学会「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」
60代・70代で健康診断が重要になる理由
若い頃は多少の異常でもすぐに大きな病気につながることは少ないですが、60代・70代では小さな異常が心筋梗塞や脳卒中、心不全、透析へつながることがあります。
糖尿病専門医として診療していると、「5年前から血糖値が高いと言われていた」「血圧が少し高いだけだから様子を見ていた」という患者さんに多くお会いします。
実際には、高血圧や糖尿病は10〜20年かけて血管を傷つけ続けます。健康診断は現在の健康状態だけでなく、「10年後の自分」を守るための重要な機会です。異常を指摘された場合は、症状がなくても一度医療機関へ相談することをおすすめします。
【参考文献】
日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」
60代・70代に多い病気ランキング
この年代で特に気をつけたい病気は次の5つです。
第1位.高血圧症
第2位.糖尿病
第3位.慢性腎臓病(CKD)
第4位.心不全
第5位.骨粗しょう症
これらは互いに繋がっており、どれか一つが悪くなると、ドミノ倒しのように他の病気も悪化してしまいます。
第1位 高血圧症(約2人に1人)
60歳以上では約半数以上が高血圧とされ、日本で最も多い慢性疾患です。
自覚症状は少ないものの、脳卒中や心不全、慢性腎臓病の最大の危険因子です。そのため、健康診断や家庭血圧測定によって早期に発見し、適切に管理することが重要です。
【参考文献】
日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2024」
第2位 糖尿病(約5人に1人)
60代以降では糖尿病の有病率がさらに高くなります。
糖尿病は網膜症・腎症・神経障害だけでなく、心筋梗塞や認知症のリスクも高めます。実際の診療でも、60代・70代になって初めて糖尿病と診断される方は少なくありません。糖尿病は早期発見・早期治療が非常に重要な病気です。
【参考文献】
日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」
第3位 慢性腎臓病(CKD)(約7人に1人)
CKD患者は日本で約2,000万人と推定され、高血圧症や糖尿病と深く関係しており高齢になるほど増加します。
CKDは、腎機能の低下や尿検査異常が続く状態を指します。初期にはほぼ無症状ですが、進行すると透析や心血管疾患のリスクが高まります。血液検査(eGFR)や尿たんぱく検査を定期的に確認することが重要です。
【参考文献】
日本腎臓学会「CKD診療ガイド2024」
第4位 心不全
心不全患者は約120万人とされ、高血圧症や糖尿病、心筋梗塞などが原因となることが多く、高齢化に伴い今後さらに増加すると予測されています。
心不全とは、心臓の働きが低下し、全身に十分な血液を送り出せなくなる状態です。息切れやむくみ、疲れやすさなどが主な症状ですが、初期には加齢による変化と区別がつきにくいことがあります。早期発見と適切な治療が重要です。
【参考文献】
日本循環器学会「急性・慢性心不全診療ガイドライン」
第5位 骨粗しょう症
骨粗しょう症は女性だけでなく男性にも増えており、転倒による骨折は寝たきりの原因になります。
骨粗しょう症は、骨がもろくなり骨折しやすくなる病気です。特に女性では閉経後に増加することが知られています。高齢者の骨折は寝たきりの原因になることもあるため注意が必要です。運動習慣や適切な栄養摂取に加え、必要に応じて治療を受けることが大切です。
【参考文献】
日本骨粗鬆症学会「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」
健康寿命を延ばすためにできること
筋肉量を維持する
実は「長生きする人」よりも「歩ける人」の方が健康寿命は長いと言われています。
筋肉量は加齢とともに減少します。筋力低下は転倒や骨折のリスクを高めるだけでなく、生活習慣病にも影響します。日常生活の中で歩く習慣をつけたり、無理のない筋力トレーニングを取り入れたりすることが大切です。
週2〜3回の筋力トレーニングや、1日30分程度のウォーキングでも、フレイルや糖尿病の予防に効果があります。
運動習慣を続ける
運動は血圧や血糖値の改善にも役立ちます。特別なスポーツである必要はありません。ウォーキングや体操など、自分が継続できる運動を見つけることが重要です。
【参考文献】
厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド」
食事で気を付けたいこと
高齢になると食事量が減るため、「減塩」だけでなく「十分なたんぱく質摂取」が重要です。
最近では「低栄養」が糖尿病やフレイルを悪化させることも分かってきました。
定期的に検査を受ける
病気の多くは早期には症状がありません。健康診断や定期的な血液検査を受けることで、病気を早い段階で発見できる可能性があります。特に糖尿病、高血圧症、CKDは定期的な検査が重要です。
健康診断や定期的な血液検査で、
・HbA1c
・血糖値
・eGFR/血清クレアチニン
・中性脂肪
・LDLコレステロール
・尿たんぱく
・血圧
を継続的に確認しましょう。
かかりつけ医を持つ
60代・70代では複数の病気を抱える方が増えます。
さらに、薬が5種類以上になると副作用や転倒リスクが高まる「ポリファーマシー」も問題になります。病気だけでなく、服薬全体を相談できるかかりつけ医を持つことが健康寿命を延ばす第一歩です。
まとめ
60代・70代では、高血圧症、糖尿病、慢性腎臓病(CKD)、心不全、骨粗しょう症などに注意が必要です。これらの病気は早期発見・早期治療によって進行を防げる可能性があります。健康診断の結果を放置せず、気になることがあれば早めに相談することが大切です。
つねだクリニックでは、糖尿病専門医を中心に、高血圧症や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病診療に力を入れています。女医も在籍しており、相談しやすい環境づくりを心掛けています。
駐車場も完備しており、伊丹市だけでなく、宝塚市、川西市、尼崎市、池田市などからも多くの患者さんにご来院いただいています。
健康診断結果が気になる方や生活習慣病について不安がある方は、お気軽にご相談ください。
(文責:つねだクリニック院長 常田和宏)
