甲状腺疾患
甲状腺とは首の前部・喉仏のすぐ下に位置する蝶のような形状の臓器で重量は20~30gです。甲状腺からは甲状腺ホルモン(サイロキシン(T4)/トリヨードサイロニン(T3))が分泌されており、私たちの「新陳代謝」を調整しているホルモンです。
甲状腺機能亢進症(バセドウ病、亜急性甲状腺炎、無痛性甲状腺炎など)
甲状腺ホルモンの分泌が過剰になり、「新陳代謝が高まる(亢進する)」ことで症状が現れます。甲状腺が腫れてホルモン産生が増加するバセドウ病が有名です。頻度は400人に1人と報告されており、男女比1:3~5程度と20~30代の若い女性に多い病気です。
一方、甲状腺が破壊されて一時的にホルモンが大量に分泌される亜急性甲状腺炎や無痛性甲状腺炎などもあります。
典型的な症状としては下記のようなものがありますが、病気・病状によって治療法が異なるためまずは血液検査と超音波(エコー)検査をお気軽にご相談ください。
よくある症状
- 首の前部が腫れている
- 首の前部が痛い、飲み込みの時にも痛い
- 安静にしているのに胸のドキドキがある、脈が早い(動悸、頻脈)
- 汗をたくさんかくようになった
- 手が震える
- 顔や手がむくむ
- イライラする、落ち着きがなくなった
- よく食べるのに体重が落ちてきた
- 眼が出てきたような気がする
甲状腺腫瘍(腺腫様甲状腺腫、濾胞腺腫、甲状腺乳頭がんなど)
甲状腺にしこりやできもの(結節)ができる病気です。甲状腺腫瘍は無症状のことが多いため、頸部のしこりに偶然気付くことや、検診やCT検査などで指摘される方がほとんどです。
多くは良性腫瘍であり、腺腫様甲状腺腫(せんしゅようこうじょうせんしゅ)、濾胞腺腫(ろほうせんしゅ)、のう胞などが含まれます。悪性腫瘍(甲状腺がん)は、乳頭がんが全体の90%以上を占めているといわれています。甲状腺に腫瘍が見つかった場合、良性、悪性を判断するために速やかな受診をお勧めします。また、良性であっても徐々に大きくなる腫瘍もあるため定期的に甲状腺超音波(エコー)検査と血液検査で変化がないかをみる必要があります。当院では甲状腺超音波(エコー)検査を行っておりますので、お気軽にご相談ください。必要であれば、機関病院と連携してより専門的な検査や治療の提案させて頂きます。
下垂体疾患(先端巨大症、下垂体機能低下症、中枢性尿崩症、クッシング病など)
脳下垂体は脳の中心(鼻の奥あたり)に位置する臓器であり、甲状腺・副腎・性腺など様々な内分泌臓器の司令塔のような働きをする大事な臓器です。また、成長ホルモンやバソプレシンという尿量を調節するホルモンも分泌しています。
ホルモンが過剰に分泌される病気(先端巨大症、クッシング病など)と、低下してしまう病気(下垂体機能低下症、中枢性尿崩症など)があります。治療法として過剰に分泌してしまう病気の多くは手術による摘除が有効とされており、低下してしまう病気については適切な種類のホルモンを補充することが重要です。また、この疾患の多くは医療費助成の対象となる「指定難病」とされているため詳しくはご相談ください。
副甲状腺機疾患(原発性副甲状腺機能亢進症、副甲状腺がんなど)
副甲状腺とはほとんどの方が聞き慣れない臓器かもしれませんが、甲状腺の周囲に上下左右4つある米粒程度の小さい臓器です。甲状腺の周囲にあるためそのように呼ばれていますが、甲状腺とは別の臓器で副甲状腺ホルモン(Parathyroid hormone、略してPTH)が分泌されています。主に血液中のカルシウムのバランスを調整しており、骨や腎臓とも密接に関わっています。
原発性副甲状腺機能亢進症は副甲状腺ホルモン(PTH)の過剰な分泌によって、血液中のカルシウム濃度が上昇する病気です。頻度は2,000人に1人で、男女比は1:3と中高年女性に多い病気です。
尿路結石、骨粗鬆症や高カルシウム血症による様々な症状(食欲不振、悪心、嘔吐、便秘、倦怠感、筋力低下、精神症状、のどの渇き、多飲多尿など)を引き起こします。それぞれが別々の病気として治療されがちですが、一連の原因が副甲状腺疾患の可能性があります。治療法としては、手術による摘除が最も有効とされております。
また、症状は副甲状腺機能亢進症と同様ですが副甲状腺にできるがん(副甲状腺がん)もあります。
疑わしい症状のある方はまずは血液検査と超音波(エコー)検査をお勧めします。まずは、ご相談ください。
副腎疾患(原発性アルドステロン症、クッシング症候群、副腎偶発腫瘍、副腎不全など)
副腎は左右の腎臓の上に各1つずつある小さな臓器であり、腎臓とは別の役割をします。ステロイドホルモン(アルドステロン、コルチゾール)、カテコラミン(アドレナリンなど)を主に分泌します。アルドステロンは塩分とカリウム、水分バランスと血圧の調整をします。コルチゾールはストレスから体を守り、糖利用と血圧を調整する生きる上で必要不可欠なホルモンです。
このホルモンが過剰に分泌される病気(原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫)と低下してしまう病気(副腎不全)があります。
そのため、過剰に分泌されると高血圧症や糖尿病など様々な症状が起きてきますし、低下してしまうと生命に関わることもあり早急にホルモンを補充する必要があります。
また、副腎には良性腫瘍ができやすいことがわかっており、画像検査などで偶然判明した腫瘍を副腎偶発腫瘍といいます。約半数がホルモン分泌に関係ない腫瘍ですが、血液検査や尿検査でホルモン分泌異常があれば治療が必要になります。
肥満症
「太っている=肥満」ではありません。医学的には「肥満」と「肥満症」は全く別で下記のような定義があります。
その際に基準となるのが
BMI(Body mass index)=
体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
です。
肥満の定義
脂肪組織が過剰に蓄積した状態で、BMIが25kg/m2以上のものを肥満といいます。
判定 |
BMI |
低体重 |
<18.5 |
普通体重 |
18.5≦BMI<25 |
肥満1度 |
25≦BMI<30 |
肥満2度 |
30≦BMI<35 |
肥満3度 |
35≦BMI<40 |
肥満4度 |
40≦ |
肥満症の定義
肥満と判定されたもののうち、以下のいずれかの条件を満たすもの
- 肥満に起因ないし関連し、減量を要する(減量により改善する、または進展が防止される健康障害を有するもの)
- 健康障害を伴いやすいハイリスク肥満
ウエスト周囲長のスクリーニングにより内臓脂肪蓄積を疑われ、腹部CT検査によって確定診断された内臓脂肪型肥満
肥満には原発性肥満と内分泌疾患などに伴う二次性肥満があります。
以前から肥満と言われていたけど、思い当たる不規則な食生活や運動習慣がない場合には実は内分泌疾患に伴う肥満の可能性もありますので一度ホルモン検査をお勧めします。
重度の肥満症では生活指導とあわせて、薬物療法や超低カロリー食事療法、肥満手術などが行われることがあります。
メタボリックシンドローム診断基準
必須項目に加えて、選択項目のいずれか2つ以上に該当すればメタボリックシンドロームと診断されます。
必須項目
- ウエスト周囲径
男性≧85cm/女性≧90cm
(内臓脂肪面積(VFA)≧100㎠に相当)
選択項目:2/3以上
- 中性脂肪≧150mg/dl
かつ/または
HDL<40mg/dl
- 収縮期血圧≧130
かつ/または
拡張期血圧≧85mmHg
- 空腹時血糖≧110mg/dl
「肥満」「肥満症」「メタボリックシンドローム」は糖尿病、高血圧症、脂質異常症、睡眠時無呼吸症候群、他の生活習慣病、さらには心疾患や脳卒中といった動脈硬化性疾患やがんなど健康寿命に影響する可能性があるため早期の生活習慣改善や治療介入が必要です。
当院では、肥満の程度に関わらず医学的根拠に基づいた生活指導、必要であれば薬物療法(保険診療・自費診療)もご提案することが可能です。
以下に該当する方はお気軽にご相談ください
- 健診で肥満と言われた
- 特定健診でメタボリックシンドロームと言われた
- 糖尿病・高血圧・脂質異常症・脂肪肝・高尿酸血症/痛風・睡眠時無呼吸症候群を指摘された
- 最近お腹まわりが気になる
- 痩せたいけど、なかなか痩せれない
- 日中の眠気、夜中のいびきがある
- 思い当たる不規則な生活習慣がないのに体重が増えている
- やせ薬について聞きたい