甲状腺機能低下症とその対策とは?健康的な生活への道しるべ!
- 2024年7月21日
- 甲状腺について
甲状腺機能低下症とは?基礎知識とその重要性を解説します!
甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの分泌が不足することで生じる病気です。
甲状腺は首の前側・喉仏のすぐ下に位置する蝶の形をした小さな臓器で、そこから分泌される甲状腺ホルモンは体の『新陳代謝』を調節します。エネルギー産生や体温の維持、心拍数の調整などに関与し、重要な役割を果たしています。
そのため、甲状腺ホルモンの不足は全身の代謝を低下させ、体全体の機能に影響を及ぼします。
症状としては、
✔疲れやすい
✔寒がり
✔皮膚が乾燥しやすい
✔体重増加
✔脈が遅い
✔食欲がない
✔便秘
✔生理不順
✔脱毛
✔気力がない
などが見られることがあります。
加えて、長期間放置してしまうと脂質異常症や動脈硬化、心臓血管疾患に影響することも言われています。甲状腺機能低下症は日常生活の質を大きく低下させ、健康寿命の短縮にも繋がるため、早期の診断と治療が重要です。
甲状腺機能低下症の原因とメカニズム
甲状腺機能低下症の主な原因は、甲状腺自体のトラブルやホルモン生成に関与する他の器官の問題です。
・慢性甲状腺炎(橋本病)
・甲状腺手術または放射線治療後
・ヨード(ヨウ素)欠乏または過剰
・薬剤性(不整脈の薬や免疫チェックポイント阻害薬(がん免疫治療薬)など)
・下垂体の病気によるもの
・視床下部の病気によるもの
などがあります。
その中で、最も一般的な原因は自己免疫疾患である慢性甲状腺炎(橋本病)です。慢性甲状腺炎症(橋本病)では、体の免疫システムが誤って甲状腺を攻撃してしまい、甲状腺ホルモンの生成が阻害されます。その結果として、甲状腺ホルモンの分泌が低下してしまいます。
また、甲状腺自体の手術によるものや、放射線治療の結果としても機能低下が起こることがあります。
さらに、ヨード(ヨウ素)欠乏や過剰摂取も甲状腺機能に影響を与えることがあります。ヨード(ヨウ素)は甲状腺ホルモンの生成に必要な要素であり、不足するとホルモンの生成が減少します。一方、ヨード(ヨウ素)を過剰に摂取することで甲状腺の働きが阻害され、同様に機能低下が起こることがあります。
これらの原因によって甲状腺ホルモンの分泌が低下すると、体の『新陳代謝』が低下し、さまざまな症状が現れます。
甲状腺機能低下症の診断と治療方法とは?
甲状腺機能低下症が疑われる場合、早期の診断と適切な治療が重要です。診断には血液検査や超音波検査を中心とした様々な検査が行われ、治療法も個々の患者さんに応じて決定されます。甲状腺ホルモン分泌低下に対しては、甲状腺ホルモンを補充する治療が一般的です。甲状腺ホルモン製剤にはT4製剤とT3製剤がありますが、いずれも体内で生成される甲状腺ホルモンとほぼ同じ成分を科学的に合成した製剤です。その中でも、T4製剤であるレボチロキシン(チラーヂン®S)が服用されることがほとんどになります。
甲状腺機能低下症の治療における注意点
甲状腺機能低下症の治療にはいくつかの注意点がありますが、適切な管理とフォローアップが重要ですので、以下の点に留意してください。
- 定期的な血液検査:甲状腺ホルモン(レボチロキシン(チラーヂン®S))の補充療法を受けている患者さんは、定期的に血液検査を受ける必要があります。これは、ホルモンレベルを監視し、薬の投与量を適切に調整するためです。通常、最初の数ヶ月間は頻繁に検査が必要で、その後は安定すれば半年から一年に一度の検査で調整可能なことが多いです。
- 薬の服用時間:甲状腺ホルモン薬(レボチロキシン(チラーヂン®S))は空腹時に服用することが推奨されています。食事と一緒に摂ると甲状腺ホルミン薬の吸収が低下することがあるため、「朝食の30分前」や「就寝前」に飲むことが理想的です。また、一部の薬剤(鉄剤、カルシウム製剤、亜鉛含有製剤など)やサプリメントと一緒に摂取すると甲状腺ホルモン薬の吸収が低下して効果が十分に得られないことがあるため、服用時間には注意が必要です。
- 一貫した服用:甲状腺ホルモン薬は毎日同じ時間に一貫して服用することが重要です。服用を忘れた場合は、気づいた時点でできるだけ早く飲むようにし、次の服用時間が近い場合は1回分を飛ばして次の予定時間に飲むようにしてください。
- 症状の変化に注意:治療中に症状の変化や新たな症状が現れた場合は、すぐに医師に相談してください。特に心拍数の増加、異常な体重変動、過度の疲労感などは注意が必要です。
- 医師とのコミュニケーション:治療に関する疑問や不安がある場合は、遠慮せずに医師に相談しましょう。治療の効果を最大化するためには、医師との良好なコミュニケーションが不可欠です。
これらの注意点を守ることで、甲状腺機能低下症の治療をより効果的に進めることができます。
甲状腺機能低下症の予防と改善策について解説
甲状腺機能低下症を予防し、症状を改善するためには、日常生活での注意が重要です。以下に、甲状腺機能低下症の予防と改善策について詳しく解説します。
日常生活でできる予防策
日常生活において、甲状腺機能低下症の予防にはいくつかのポイントがあります。
- 適切なヨード(ヨウ素)摂取:ヨード(ヨウ素)は甲状腺ホルモンの生成に欠かせない栄養素です。ヨード(ヨウ素)を多く含む食品としては海藻類(昆布、わかめ、海苔)、魚介類、乳製品などがあります。ただし、過剰摂取は逆効果になることもあるため、バランスを考慮した摂取が重要ですので適量のヨード(ヨウ素)を摂るようにしましょう。
- バランスの取れた食事:栄養バランスの取れた食事を心がけることは、甲状腺の健康にとって重要です。ビタミンやミネラルを豊富に含む食品を積極的に取り入れ、加工食品や過剰な糖分、脂肪の摂取を控えるようにしましょう。セレンや亜鉛は甲状腺の働きをサポートするといわれています。
- ストレス管理:慢性的なストレスは甲状腺機能に悪影響を及ぼすことがあります。リラクゼーションテクニックや趣味、適度な運動などを取り入れ、ストレスを効果的に管理することが予防に繋がります。
- 定期的な健康診断:早期発見と予防のためには、定期的な健康診断が重要です。特に家族に甲状腺疾患の歴がある場合は、定期的に甲状腺のチェックを行いましょう。
これらの日常的な予防策を実践することで、甲状腺機能低下症の発症リスクを減らすことができます。
甲状腺機能低下症のリスクファクターは?
甲状腺機能低下症のリスクを理解することで、予防や早期発見に役立てることができます。以下に、甲状腺機能低下症の主なリスクファクターを挙げます。
- 家族歴:甲状腺疾患の家族歴がある場合、遺伝的要因が関与して甲状腺機能低下症のリスクが高まります。特に親や兄弟姉妹に甲状腺疾患の病気の方がいる場合は、定期的な検査が推奨されます。
- 年齢と性別:甲状腺機能低下症は、特に中年以降の女性に多く見られます。女性ホルモンの変動が甲状腺機能に影響を与えることが一因と考えられています。
- 自己免疫疾患:自己免疫疾患である慢性甲状腺炎(橋本病)は、甲状腺機能低下症の最も一般的な原因です。そのため、自己免疫疾患を持つ人は甲状腺機能低下症のリスクが高くなります。
- 甲状腺手術や放射線治療:過去に甲状腺の手術を受けたことがある場合や、頭頸部に放射線治療を受けたことがある場合もリスクが高まります。これらの治療は甲状腺の機能を低下させる可能性があります。
- ヨード(ヨウ素)摂取の異常:ヨード(ヨウ素)の過剰摂取または不足は、甲状腺機能に影響を与えることがあります。適切なヨード(ヨウ素)摂取を心がけることが重要です。
- 薬物の影響:特定の薬物、特にアミオダロン(不整脈の薬)や炭酸リチウム(気分安定薬)、最近では免疫チェックポイント阻害薬(がん免疫治療薬)などは、甲状腺機能に影響を与えることがあります。これらの薬を服用している場合は、医師と相談して甲状腺機能を定期的にチェックすることが推奨されます。
これらのリスクファクターを認識し、必要に応じて予防策を講じることで、甲状腺機能低下症の発症リスクを低減することが可能です。
まとめ
甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの不足によって全身の代謝が低下し、さまざまな症状を引き起こす病気です。甲状腺ホルモンは体の『新陳代謝』を調節します。エネルギー産生や体温の維持、心拍数の調整などに関与し、重要な役割を果たしているため、その不足は日常生活に大きな影響を与えます。
この記事では、甲状腺機能低下症の基礎知識から原因、診断方法、治療法、そして健康維持のための生活習慣について詳しく解説しました。以下に、ポイントをまとめます。
- 甲状腺の役割とホルモンの重要性:甲状腺ホルモンは代謝を調節し、全身の機能に影響を与える重要なホルモンです。
- 主な原因:慢性甲状腺炎(橋本病)やヨード(ヨウ素)の過不足、甲状腺手術、放射線治療などが原因となります。
- 症状:疲労感、寒がり、体重増加、便秘、生理不順、脱毛、うつ症状など多岐にわたります。
- 診断と治療:血液検査や超音波検査による診断と甲状腺ホルモン補充療法が主な治療法です。
- 生活習慣の改善:健康的な食事、適度な運動、ストレス管理、適切な睡眠が重要です。
甲状腺機能低下症は適切な治療と生活習慣の改善によって、症状を管理し、生活の質を向上させることができます。もし、この記事を読んで自身の症状に心当たりがある場合は、専門の医師に相談することをお勧めします。当クリニックでは、甲状腺機能低下症の血液検査、受診頂いた当日の甲状腺超音波検査も行っております。伊丹市、川西市、宝塚市にお住まいの方々で、甲状腺に関する不安や疑問がある場合は、いつでもお気軽にご相談ください。
(文責:つねだクリニック院長 常田和宏)