診察室血圧・家庭血圧の目標値が「130/80未満」に統一へ
- 2025年12月15日
- 高血圧について

2025年の高血圧ガイドライン改訂とは?
2025年8月に改訂された「高血圧治療ガイドライン(JSH2025)」では、これまで年齢や併存疾患などによって複数に分かれていた血圧の目標値が「130/80mmHg未満」に統一されました。これは国内外の大規模研究(SPRINT試験、HONEST研究など)で、より厳格な血圧管理が脳・心血管疾患のリスクを確実に下げると示されたためです。私が診療する兵庫県伊丹市のクリニックでも、高血圧について不安を抱えて来院される方が年々増えています。特に40〜60代の方は健康診断の再検査通知をきっかけに、血圧コントロールへの関心が高まっています。ここでは、新ガイドラインの背景と高血圧治療の基本的な考え方を、分かりやすく解説していきます。
高血圧治療におけるガイドラインの役割とは?
高血圧治療ガイドラインは、「どの血圧値を目指すべきか」「どの薬をどう使うか」を決める医学的ルールで、国内外の研究結果をまとめ、高血圧治療の標準的な方針を示すものです。医療現場ではこのガイドラインに基づき、患者さんの治療計画を立てます。ガイドラインは定期的に改訂され、国民全体の健康状態や最新のエビデンス(医学的根拠)を反映しています。
なぜ血圧の目標値を一本化する必要があったのか?
従来は年齢や病気の種類によって血圧の目標値が複数に分かれていました。しかし、患者さんにとっては「自分はどの基準に当てはまるのか」が分かりにくく、治療への混乱を招くことがありました。そこでJSH2025では、診察室血圧・家庭血圧それぞれの目標値を明確に統一することで、患者さんも医療者も共有しやすい指標とする方向に変わりました。
脳・心血管疾患リスクと降圧目標の関係
血圧が高い状態が続くと、脳梗塞・心筋梗塞・心不全などのリスクが指数関数的に上昇します。特に 130/80mmHgを超えるあたりから急激にリスクが増える ことが大規模研究(SPRINT(Systolic Blood Pressure Intervention Trial), 2015)で明確になりました。厳格な降圧により心血管イベントを27%以上減少できるとの報告もあります。当院では糖尿病・甲状腺疾患を持つ患者が多いため、より厳密な血圧管理が必要です。
診察室血圧と家庭血圧で異なる?新ガイドラインの降圧目標を分かりやすく解説
JSH2025では、年齢・病態・合併症に関わらず診察室血圧の目標値が 「130/80mmHg未満」、家庭血圧の目標値が 「125/75mmHg未満」に統一されました。これは「白衣高血圧」や「仮面高血圧」が多い日本人の特徴を重視したもの。診察室で正常でも、家庭では高いケースが少なくありません。血圧管理は家庭血圧を中心に行うことで、脳・心血管リスクの予測精度が向上します。当院では血圧手帳の活用や、家庭血圧の測り方の指導を徹底しています。
診察室血圧の目標値「130/80mmHg未満」が意味するもの
診察室血圧は緊張により上がりやすいため、従来は家庭より緩めの目標値でした。しかし最新研究では、診察室でも130/80未満を維持することで脳卒中リスクを低減できることが分かっています。
家庭血圧の目標値「125/75mmHg未満」をどう判断する?
家庭血圧は診察室よりも低めに出やすいため、目標値は「125/75mmHg未満」と、より厳格に設定されています。家庭での血圧管理は治療効果を見極めるうえで非常に重要で、国際的にも家庭血圧の活用が推奨されています。朝と夜の決まったタイミングで測定し、記録をつけることで、ご自身の傾向がよく分かるようになります。
診察室血圧と家庭血圧の違いと、高血圧治療での使い分け方
・診察室血圧:緊張で高く出やすい(白衣高血圧)
・家庭血圧:本来の血圧に近い
両方を参考にすることで、より正確な治療方針が可能です。どちらも心血管疾患リスクを上げる可能性があるため、両方の値を総合的に判断します。
JSH2019からJSH2025への変更点は?
ここでは、前回の高血圧治療ガイドライン(JSH2019)からの主な変更点について解説します。最大の変更点は 「年齢別・疾患別の目標値」から「共通の目標値130/80未満」へ統一 される点です。治療の分かりやすさが向上し、患者自身が血圧管理しやすくなります。
従来の年齢別・疾患別の目標値との違い
JSH2019では75歳以上の高齢者は140/90未満とやや緩めでした。しかし実臨床では混乱することが多く、リスクに応じた柔軟な運用が必要でした。高血圧治療ガイドライン(JSH2025)ではよりシンプルになります。
高血圧治療のステップと新しい降圧目標
降圧治療では、食事(減塩)、運動、体重管理などの生活習慣改善が基本となります。そのうえで降圧薬(例:ACE阻害薬〈アンジオテンシン変換酵素阻害薬〉、ARB〈アンジオテンシンII受容体拮抗薬〉、カルシウム拮抗薬、利尿薬など)が追加されます。どの薬剤を選ぶかは患者さんの体質や合併症によって異なりますが、最終的な目標は「130/80mmHg未満」を安定して維持することです。
ガイドライン改訂で患者さんの治療方針はどう変わる?
治療のスピードと「早期達成」が重視されます。糖尿病合併例も多い当院では、早期からARB〈アンジオテンシンII受容体拮抗薬〉+CCB〈カルシウム拮抗薬〉の併用も積極的に提案します。
今日からできる高血圧のセルフケア
高血圧治療は医師だけが行うものではなく、患者さん自身の生活習慣が大きく関わります。ここでは、今日から取り組める高血圧対策を紹介します。
家庭血圧を正しく測る方法
家庭血圧は「朝起きてすぐ」「寝る前」の1日2回測定するのが基本です。排尿後、椅子に腰掛け、1〜2分安静にしてから測定します。腕帯(カフ)は心臓の高さに合わせ、毎回同じ条件で測ることが重要です。データはアプリや手帳に記録し、診察時に共有すると、より適切な治療につながります。
食事・運動・睡眠で血圧を整える生活習慣
減塩(1日6g未満)、野菜や果物を多く含むDASH食、適度な運動(ウォーキングなど)、十分な睡眠は血圧改善に効果があります。また、飲酒量を控え、禁煙に取り組むことも大切です。生活習慣を整えることで、薬に頼りすぎない高血圧治療が可能になります。
降圧薬の正しい使い方と注意点
降圧薬は、医師の指示に従って継続的に服用することが大切です。途中で自己判断によりやめてしまうと、血圧が急上昇する危険があります。ACE阻害薬やARB、カルシウム拮抗薬、利尿薬など種類が多く、副作用の特徴も異なります。薬はあくまで「血圧を安定させるための手段」であり、生活習慣改善と併用することが最も効果的です。
まとめ
2025年の高血圧治療ガイドライン改訂により、診察室血圧・家庭血圧の目標値が明確に統一され、患者さんが自身の治療目標を理解しやすくなりました。これは最新の大規模研究で、より厳格な血圧管理が脳卒中・心筋梗塞のリスクを下げると明確に示されたためです。日々の家庭血圧を記録し、生活習慣を整えることで、血圧コントロールは大きく改善します。当院は伊丹市を中心に、川西市、宝塚市、尼崎市、池田市などから多くの患者さんにご来院いただいており、女性医師(女医)による診療も行っています。糖尿病内科を専門とし、生活習慣病全般を丁寧にサポートいたします。駐車場もあり、お車でも通院しやすい環境ですので、血圧が気になる方はお気軽にご相談ください。
(文責:つねだクリニック院長 常田和宏)