朝起きても疲れが取れない原因は?糖尿病・高血圧・CPAPとの関係を専門医が解説

朝起きても疲れが取れない原因とは?睡眠と倦怠感の関係を専門医が解説
「しっかり寝たはずなのに、朝からだるい」「疲れが抜けない」。このような訴えは、伊丹市・宝塚市・川西市・池田市・尼崎市から来院される患者さんでも年々増えています。実は、朝の倦怠感は“睡眠時間”だけでなく、“睡眠の質”が大きく関係しています。睡眠中は脳と身体を回復させる「自律神経」「ホルモン」「代謝システム」が働きますが、これらが乱れると回復が不十分になり、翌朝も疲労が残ります。特に糖尿病・高血圧・脂質異常症・甲状腺疾患をお持ちの方は、代謝や自律神経が乱れやすく、質の悪い睡眠につながることが報告されています(J Clin Endocrinol Metab 2018)。さらに、最近はスマホ・夜間の光刺激・ストレスによる“眠りの質の低下”も一般的です。朝の疲れは単なる生活習慣だけでなく、隠れた病気のサイン であるケースもあり、専門医の評価が大切です。まずは疲れが残るメカニズムから解説します。
疲れや倦怠感が残るメカニズム
睡眠中、体は「副交感神経」が優位となり、脳疲労の回復・ホルモン分泌・細胞修復が進みます。しかし、交感神経が優位なまま眠る「質の悪い睡眠」では、回復が不十分な状態で朝を迎えます。とくに深い睡眠(ノンレム睡眠)が不足すると、成長ホルモンが十分に分泌されず、疲労物質が体に残りやすくなります。また、ストレスの蓄積、カフェインの摂りすぎ、寝る前のスマホの光(ブルーライト)が睡眠ホルモン(メラトニン)の分泌を妨げ、眠りが浅くなる原因になります。その結果「寝ても疲れがとれない」「体が重い」といった症状があらわれます。睡眠医学の研究では、深睡眠が不足すると“翌日の集中力・血糖値・血圧”に悪影響を及ぼすことも報告されています(Sleep. 2015)。
40〜60代に増える「なんとなく不調」の背景とは?
更年期によるホルモン変動、自律神経の乱れ、生活リズムの不安定化などが重なり、中高年に「原因がよくわからない疲れ」が増加します。
40~60代は、仕事・家事・育児・介護など負担が重なる年代です。伊丹市の当院でも、スタッフ(30〜40代の子育て中の女性)が「なんとなく疲れが取れない」と訴えることがあります。原因として、①ホルモンバランスの変化、②自律神経の乱れ、③慢性的ストレス、④糖代謝の低下、⑤睡眠時無呼吸症候群(SAS)の増加が挙げられます。特に「なんとなく不調」は、実は“未診断の病気”が背景にあることが多いのが特徴です。たとえば、甲状腺機能低下症、軽い糖尿病、高血圧、鉄欠乏性貧血などは、日中倦怠感を引き起こしながら気づかれにくい病気です。特に女性は更年期の影響が加わり、倦怠感・睡眠障害を生じやすくなります。「歳のせい」と思って放置する方も多いですが、改善できる原因が隠れていることもあります。
睡眠不足と体内リズムの乱れが引き起こす影響
睡眠不足や生活リズムの乱れは、体全体の代謝を狂わせます。睡眠は「体内時計(概日リズム)」と密接に関係しており、夜更かし・早朝覚醒・不規則な勤務は、ホルモン分泌を乱し、血糖値・血圧・脂質にも影響します。例えば、睡眠時間が6時間以下の人は糖尿病発症リスクが大幅に上昇することが複数の研究で証明されています(Diabetes Care 2006)。さらに、睡眠不足は“翌日の疲労感”“集中力低下”“肥満”“うつ症状”とも関連。体内リズムを整えることは、健康の基本であり、疲労改善の第一歩です。
睡眠の質が悪くなる主な原因
「寝ているのに疲れが取れない」という患者さんの多くは、睡眠の“質”が低下しています。伊丹市・宝塚市・川西市周辺でも、仕事や育児で生活リズムが乱れている方が増えています。睡眠の質を下げる原因は、①ストレス、②自律神経の乱れ、③ブルーライト、④カフェインや飲酒、⑤運動不足、⑥寝具の不一致など多岐にわたります。睡眠医学の研究では、これらの要素が深いノンレム睡眠を妨げ、翌朝の疲労感に直結することが報告されています(Sleep Med Rev. 2017)。また、糖尿病や高血圧の患者さんでは代謝リズムの乱れが睡眠に影響しやすく、インスリン分泌や夜間血圧にも関与します。特に、夜間の血圧低下(ディッピング)が弱い「ノンディッパー型」の高血圧患者では睡眠障害との関連が強いこともわかっています。当院では、生活習慣・病気・睡眠環境を総合的に評価し、改善につながる治療を提案しています。
ストレス・自律神経の乱れ・スマホの影響
ストレスが続くと自律神経のバランスが崩れ、交感神経が優位になり、寝つきが悪くなったり、浅い睡眠が続いたりします。特に、スマホのブルーライトは脳を覚醒させ、睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌を抑制するため、眠りが浅くなることが複数の研究で確認されています(J Clin Sleep Med. 2014)。またストレスは血糖コントロールにも悪影響を与え、糖尿病患者さんでは夜間の高血糖が睡眠の質をさらに低下させる場合があります。
睡眠の質を下げる生活習慣
・寝る前のカフェイン
・アルコール(眠れるように見えて睡眠を浅くする)
・夜間の重い食事
・運動不足
・不規則な就寝時間
これらの生活習慣は深い睡眠を妨げ、翌朝の倦怠感につながります。とくにアルコールは「寝つきは良くなるが深く眠れない」という特徴があり、翌日の疲労を悪化させます。
枕・寝具・温度など睡眠環境の重要性
寝具(マットレス・枕)が身体に合っていないと、深睡眠に入れず、寝返りが多くなります。室温は18〜26℃、湿度40〜60%が推奨されています。また、寝室が明るい・騒音がある場合も眠りの質が低下します。環境の見直しは、睡眠改善の“即効性のある対策”の1つです。
病気が隠れている可能性も
朝の疲れは「生活習慣の問題」と思われがちですが、実際には病気が原因のケースが多くあります。当院でも、倦怠感で来院された方の多くが、糖尿病・甲状腺疾患・貧血・睡眠時無呼吸症候群(SAS)などを新たに発見しています。特に血糖値が高い状態(空腹時血糖・HbA1c上昇)は、エネルギー代謝が低下し、いくら寝ても身体が回復しにくくなります。また、高血圧や脂質異常症があると血管機能が低下し、脳の休息が不十分になり、疲れやすさにつながります。「なんとなく疲れやすい」の裏には重大な疾患が隠れていることもあり、専門医の評価が重要です。
糖尿病と疲れ・倦怠感の関係
糖尿病では、血糖値の高い状態が続くことで細胞にエネルギーが届きにくくなり、慢性的な疲労を感じます。また、血糖コントロールが悪いと夜間の頻尿・口渇で睡眠が分断され、朝の疲れにつながります。
高血圧と睡眠の質の悪化
高血圧は血管の柔軟性を低下させ、脳の血流調整能力を下げるため、睡眠の質が低下しやすくなります。また、夜間の血圧が下がりにくい「ノンディッパー型」では交感神経が常に高ぶった状態で、疲労感・だるさが続くことが知られています。
脂質異常症・甲状腺・貧血など他の病気もチェック
甲状腺機能低下症は代表的な“疲れやすさ”を引き起こす病気です。また、鉄欠乏性貧血は酸素が身体に運ばれにくくなるため、強い倦怠感を伴います。脂質異常症も血管機能を悪化させ、睡眠の質を低下させる原因になります。「寝ても疲れが取れない」場合は、一度血液検査で確認することを推奨します。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)と朝の疲れ
いびき、中途覚醒、呼吸が止まる、日中の強い眠気。これらが当てはまる場合、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性があります。SASでは睡眠中に呼吸が止まり、酸素が低下します。その結果「夜中に何度も覚醒」「深い睡眠に入れない」状態が続き、朝の強い疲労感へとつながります。伊丹市でも診断・治療が増えており、当院では自宅でできる簡易検査で評価が可能です。治療が必要な場合はCPAP療法を行います。
睡眠時無呼吸が起こす低酸素と疲労感
睡眠中の低酸素は、脳や心臓に負担をかけ、翌朝の強い倦怠感の原因になります。国際的な研究でも、無呼吸回数が多いほど疲労感が強くなることが示されています(NEJM 2016)。
いびき・中途覚醒・日中の眠気がある場合のチェックポイント
・家族に「いびきが大きい」と言われる
・寝ている間に呼吸が止まっている
・朝起きた瞬間から疲れている
・朝起きたときに頭痛がする
・日中眠くて仕事に集中できない
これらは典型的なSASのサインです。
CPAP治療が必要になる症状と検査の流れ
SASが中等症以上の場合、CPAP(持続陽圧呼吸療法)療法が推奨されます。CPAPは空気を送り、気道を広げ、無呼吸を防ぐ治療で、翌朝の疲れが劇的に改善することが多いのが特徴です。検査は①自宅で簡易検査→②結果説明→③必要に応じてCPAP開始、という流れです。詳しい解説は前回の記事をご覧ください。
👉 CPAPの詳しい解説はこちら:https://tsuneda-clinic.com/blog/cpap/
自宅でできる睡眠改善法
睡眠の質を改善するためには、生活習慣の調整が重要です。すぐにできる方法として、①就寝2時間前のスマホ控え、②軽いストレッチ、③お風呂は寝る90分前、④カフェインは午後以降避ける、⑤寝室を暗く静かにする、などがあります。どれも科学的根拠のある方法です。
睡眠の質を高める具体的な工夫
・起床後すぐに太陽光を浴びる
・夕方の軽い運動
・就寝前の深呼吸
などが効果的です。
夕食・飲酒・カフェインの見直し
夕食は寝る3時間前までに。コーヒー・エナジードリンクは午後以降控え、アルコールは“寝つきが良くなるだけで睡眠を浅くする”ため注意が必要です。
寝る前のスマホ・ブルーライト対策
ブルーライトはメラトニンの分泌を抑え、脳を覚醒させます。ナイトモード活用・就寝1〜2時間前のスマホ控えは非常に効果的です。照明を暗めにし、穏やかな音楽やストレッチを組み合わせるのも効果的です。
病院を受診すべきタイミング
次の症状が続く場合は医療機関へ相談してください。
・朝の疲れが2週間以上続く
・日中の強い眠気
・いびき・無呼吸
・体重増加
・健診で血糖値・血圧・脂質異常を指摘された
病気が隠れている可能性が高いため、早期の検査が重要です。
朝の疲れ・倦怠感が続くときに受診したほうが良いサイン
はっきりした原因がないのに疲れが3週間以上続く場合、睡眠の質や病気が関係している可能性があります。特に「以前より体力が落ちた」「寝ても回復しない」という場合は一度相談してください。
健診異常(血糖値・血圧・脂質)と睡眠の関連
血糖・血圧・脂質の異常は睡眠を悪化させることが多く、放置するとさらに疲れやすくなります。糖尿病や高血圧と睡眠の関係は深く、治療を進める上でも睡眠の改善は重要です。
伊丹市で睡眠や倦怠感の相談ができる医療機関の選び方
・糖尿病・高血圧・甲状腺の治療ができる
・睡眠時無呼吸の検査ができる
・CPAP管理に対応
・女性医師も在籍しており、相談しやすい
睡眠・生活習慣病どちらも診られる医療機関が安心です。当院はこれらに対応しており、お車でも駐車場9台が利用可能です。気になる症状は早めにご相談ください。
まとめ
朝起きても疲れが取れない――これは単なる「寝不足」だけでなく、糖尿病・高血圧・脂質異常症・甲状腺疾患・貧血・睡眠時無呼吸症候群(SAS)など、体の根本的な問題が隠れていることも少なくありません。特に40〜60代はホルモン変化や生活習慣の乱れが重なり、「なんとなく不調」が起こりやすい時期です。睡眠の質を上げるには、寝る前のスマホ習慣・カフェイン・アルコールの見直し、環境の調整、体内リズムを整えることが重要です。
つねだクリニックには糖尿病内科の専門医である私に加え、女医も在籍しており、伊丹市・川西市・宝塚市・尼崎市・池田市から多くの方にご来院いただいています。駐車場も完備しており、受診しやすい環境を整えています。睡眠や疲れでお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。
(文責:つねだクリニック院長 常田和宏)
【参考文献一覧】
- 日本睡眠学会「睡眠障害 診療ガイドライン」
- 日本高血圧学会ガイドライン
- 日本糖尿病学会治療ガイドライン
- Diabetes care, 2006 29: 657-661
- CPAP for Preventation of Cardiovascular Events in Obstructive Sleep Apnea,NEJM, 2016