冬季は血圧上昇に要注意!季節的な変動が高血圧・脳出血・総卒中リスクを高める理由を医師が解説
- 2025年12月22日
- 高血圧について

冬季に血圧上昇が起こりやすい理由とは?季節的な変動と高血圧の関係
冬になると「血圧が上がりやすい」という現象は、多くの研究で確認されています。日本高血圧学会のデータでも、冬季は平均血圧が夏より5〜10mmHgほど高いと報告されています。気温が低くなることで血管が収縮し、心臓がより強い力で血液を押し出す必要が生じるためです。また、寒さにより交感神経が刺激され、アドレナリン分泌が増え、血圧がさらに上昇します。加えて冬は運動量の低下、塩分の多い温かい料理の摂取増加、水分摂取の減少など生活習慣の変化も重なります。伊丹市でも冬は冷え込みが強く、患者さんから「いつもより血圧が高い気がする」という相談をよく受けます。ここから、冬季に特有の血圧変動を具体的に解説していきます。
気温低下が血管に与える影響と血圧上昇のメカニズム
寒さを感じると、体は熱が逃げないように血管をキュッと縮めて血流を調整します。これを「血管収縮反応」と呼びます。血管の通り道が狭くなれば、そのぶん血圧は高くなります。また、寒さにより交感神経(自律神経の一部)が活発になり、心拍数が上がることで血圧が上昇します。こうした生理的反応は誰にでも起こりますが、もともと高血圧の方は冬季により血圧が上がりやすくなる点に注意が必要です。
冬季に塩分摂取や生活習慣が変化しやすい理由
冬は鍋料理、ラーメン、味噌汁など「温かい・塩分の多い」食事が増える傾向にあります。また、汗をかかないため塩分を摂りすぎても自覚しにくく、さらに水分摂取量が低下することで血液が濃くなり血圧が上がりやすくなります。加えて寒さで外出が減り、運動量が低下し、体重増加や血圧上昇を招きやすくなります。当院の生活習慣病外来でも、冬に血糖値や血圧が悪化する患者さんが増えます。冬季は「知らないうちに塩分とカロリーが増える季節」と意識することが大切です。
高血圧の方が冬季に気をつけたいポイント
高血圧の方は、冬に血圧が上がることで脳や心臓の血管に負担がかかりやすくなり、脳出血や心筋梗塞リスクが上昇します。そのため、日頃より血圧を測り、自分の変動を知ることが重要です。また、暖房の効いた部屋から寒い廊下や脱衣所に移動する際など、急激な気温差は血圧を大きく変動させる原因になります。こういった「ヒートショック」を避けるための環境づくりも必要です。暖房はケチらず「脱衣所と浴室を温める」「朝起きた直後の冷え対策」を徹底しましょう。
冬季の血圧上昇と脳出血・総卒中リスクの関係
冬季の血圧上昇は一時的なものですが、その変動が大きいほど「脳出血」や「総卒中(脳卒中全体)」のリスクが高まることが報告されています。気温が1℃下がるごとに血圧が上昇し、脳の細い血管に強い負担がかかります。日本は冬に脳卒中が増える国として知られており、実際の統計データでも明確に冬季の増加が見られます。「冬は脳卒中が増える季節」という事実を知り、早めの対策が命を守ります。
日本国内データが示す脳出血の季節的な増加
国立循環器病研究センターの調査では、脳出血は冬季(12〜2月)に最も多く、夏季の約1.5倍に増えると報告されています。寒さによる急激な血圧上昇が主な原因で、高齢者や高血圧治療中の方では特にリスクが高まります。
脳卒中が冬季に多い理由とは?
脳出血に限らず、脳梗塞を含む「脳卒中」全体も冬に増える傾向があります。理由としては、寒冷による血圧上昇、血管収縮、脱水傾向(空気の乾燥により水分が失われやすい)、屋外活動減少などが挙げられます。これらの要因が重なり、血液がドロッとしやすくなることで脳の血管トラブルのリスクが高まります。糖尿病患者では血管内皮の反応が鈍く、さらにリスクが上がります。
血圧上昇が脳血管に与える負担について
脳の血管は細く破れやすいため、急激な血圧上昇(サージ)は出血につながる危険があります。特に早朝・入浴時・トイレ時にサージが起きやすく「沈黙の血管ストレス」と呼ばれます。家庭血圧が普段より高い日が続く場合は早めに相談してください。
家庭血圧の管理が冬季に特に重要な理由
日本高血圧学会は、外来血圧以上に「家庭血圧」を重視しています。冬季は外気温の影響で朝の血圧が特に高くなりやすいため、家庭血圧で正確な変動を把握することが重要です。伊丹市周辺(宝塚市・川西市・池田市・尼崎市)は冬の朝が冷え込みやすく、当院でも冬季の家庭血圧悪化例が増えます。家庭血圧は「早朝と就寝前」に毎日測り、突然の上昇や変動幅の増大は脳出血リスク増加のサインになります。
朝晩の家庭血圧が上がりやすい季節的な変動
冬季は家庭血圧の「朝と夜の差」が大きくなります。特に朝の血圧は、起床直後に交感神経が急激に高まり、気温差と重なることで大きく上昇しやすく、日本では「モーニングサージ」が脳卒中の主要リスクとされています。国内の大規模研究(J-HOP研究)でも、冬季は朝の家庭血圧が年間で最も高いと報告されました。また、夜間も布団から出る際や暖房の切れた時間帯に血圧が上昇しやすく、特に高齢者では影響が大きくなります。家庭血圧は「朝起きてすぐ」「寝る前」に測定することで、季節的な変動をより正確に把握できます。
家庭血圧を正しく測定するためのポイント
家庭血圧は外来血圧より信頼性が高いため、日本高血圧学会でも「治療調整の中心」に置かれています。正しく測定するには①朝は起床後1時間以内、排尿後、服薬前②夜は就寝前③背もたれに寄りかかり、足は組まない④測定前の1~2分は安静を守ることが大切です。また、冬は部屋が寒いと血圧が実際より高く出るため、「室温は18〜20℃まで温めてから測定」が推奨されます。さらに袖口が厚い冬服は誤差の原因となるため、腕をしっかり出して測定しましょう。
血圧上昇を早期に気付くためのセルフチェック方法
血圧の急上昇は自覚症状がほぼありませんが、いくつかの「気づきサイン」があります。例えば①いつもより頭が重い②朝の手足の冷えが強い③顔がほてる④動悸がする⑤入浴後に疲れる—などです。冬季はこれらの症状が「寒さによるもの」と勘違いされやすく、受診が遅れるケースが見られます。また、家庭血圧では「普段より10mmHg以上の上昇が3日以上続く」場合は治療調整が必要なサインです。
冬季の血圧上昇を防ぐために今日からできる対策
血圧上昇を防ぐには、日常生活の中でできる工夫がたくさんあります。ここでは冬季におすすめの対策を紹介します。
体を冷やさない・生活環境を整えるコツ
冬季の血圧対策で最も重要なのは「寒暖差をなくすこと」です。ヒートショック予防のため、入浴前に浴室・脱衣所を暖房で温め、湯温は41℃以下、入浴は10〜15分以内が推奨されています。また、朝は布団から出る前に部屋の暖房を自動で入れておくと、モーニングサージを抑えられます。意外なポイントとして、冬の水分不足が血圧上昇の原因になるため「こまめな白湯(さゆ)補給」が効果的です。当院では高齢の方や糖尿病患者さんに、冬こそ水分摂取と保温を重視するよう指導しています。
塩分・運動・睡眠で改善する高血圧対策
冬は鍋物・スープ類の摂取が増え、塩分過多になりがちです。1日6gの塩分制限を目指し、汁物は1日1杯まで、加工食品は控えめにしましょう。運動は屋外が難しい場合でも室内でできる軽い筋トレやストレッチで十分です。また睡眠不足は交感神経を刺激して血圧を上げるため、就寝前のスマホ使用を控え、温かい入浴でリラックスしてから眠ることが推奨されます。冬季の体重増加は血圧悪化に直結するため、糖尿病患者さんは特に注意が必要です。
必要に応じた薬物療法と医療機関への相談の重要性
生活習慣改善だけでは血圧が下がらない場合、ACE阻害薬、ARB、カルシウム拮抗薬、利尿薬といった降圧薬(薬の種類)が使用されます。これらは医師の判断に基づいて処方されるもので、自己判断でやめたり変更したりしないことが大切です。
冬季は血圧上昇に注意をして脳出血や総卒中を予防しましょう
冬季は誰でも血圧が上がりやすく、特に高血圧の方は脳出血や総卒中のリスクが高まります。季節的な変動を理解し、家庭血圧をこまめに測りながら、生活習慣の工夫を積み重ねることが大切です。普段より血圧が高い日が続く場合や、朝の血圧が上がりやすい場合は早めに医療機関へご相談ください。当院は伊丹市を中心に、川西市、宝塚市、尼崎市、池田市などから多くの患者さんにご来院いただいています。女性医師(女医)も在籍しており、糖尿病内科専門医として生活習慣病全般を丁寧にサポートいたします。駐車場も完備しており、お車でも通いやすい環境です。冬の血圧が気になる方は、どうぞお気軽にご相談ください。
(文責:つねだクリニック院長 常田和宏)