糖尿病の方の禁煙ガイド〜糖尿病内科医が解説〜
- 2026年1月29日
- 禁煙外来について

糖尿病と喫煙の関係
糖尿病がある方にとって、喫煙は単なる生活習慣の問題ではありません。血糖コントロールだけでなく、将来起こりうる合併症のリスクにも深く関係します。まずは、糖尿病と喫煙の関係を正しく理解することが大切です。
糖尿病がある人ほど喫煙の影響を強く受ける理由
喫煙はインスリン抵抗性(インスリンが効きにくくなる状態)を高め、血糖値を上げやすくします。また、血管の内側を傷つけることで動脈硬化を進めます。糖尿病の方はもともと血管障害が起こりやすいため、喫煙の影響が重なり、心筋梗塞や脳卒中のリスクがさらに高くなることが知られています。
参考文献:American Diabetes Association. Standards of Medical Care in Diabetes
今から禁煙しても遅くない理由
「もう何十年も吸ってきたから今さら…」と感じる方は少なくありません。しかし禁煙による効果は、やめた瞬間から始まります。数年単位で心血管イベントのリスクが確実に低下することが、国内外の研究で示されています。糖尿病の罹病期間や年齢に関係なく、禁煙には明確なメリットがあります。
参考文献:U.S. Department of Health and Human Services. Smoking Cessation
糖尿病の人が禁煙を始めると体に何が起こるのか?
禁煙を始めた直後、「体調が変わった」「不安定になった」と感じることがあります。これは多くの方に起こりうる反応です。
禁煙初期に起こりやすい体調変化
禁煙を始めると、イライラ、不安、眠気、集中力低下などが起こることがあります。これはニコチン離脱症状と呼ばれ、体がニコチン依存から回復している証拠です。多くは数日〜2週間で軽くなります。
参考文献:US Department of Health and Human Services. Smoking Cessation: A Report of the Surgeon General.
その変化は糖尿病の悪化なのか?
禁煙初期の不調の多くは、糖尿病そのものの悪化ではありません。ただし、間食が増えたり生活リズムが乱れると、一時的に血糖が上がることがあります。自己判断せず、血糖値の推移を確認しながら進めることが大切です。糖尿病内科での禁煙サポートが安心な理由です。
参考文献:日本糖尿病学会 糖尿病診療ガイドライン
禁煙が血糖値・HbA1cに与える影響
禁煙直後の血糖値の変化
禁煙直後は、ストレスや体重増加の影響で血糖値やHbA1c(過去1〜2か月の血糖の平均)が一時的に上昇することがあります。これは多くの方で一過性です。数値だけを見て「禁煙は失敗」と判断しないことが重要です。
参考文献:American Diabetes Association. Standards of Medical Care in Diabetes.
長期的に見た禁煙と血糖コントロール
長期的には、禁煙によりインスリン抵抗性が改善し、血糖コントロールが安定しやすくなることが報告されています。短期的な数値だけで判断せず、長期的視点が重要です。
参考文献:American Diabetes Association. Standards of Medical Care in Diabetes.
禁煙と体重増加
なぜ禁煙後に体重が増えやすいのか?
禁煙後に体重が増える理由は、ニコチンによる代謝促進作用がなくなること、口寂しさによる間食増加です。味覚が回復して食事がおいしくなるのも一因です。
体重増加はどこまで問題になるのか?
平均的な体重増加は2〜3kg程度で、これだけで糖尿病が急激に悪化することはまれです。体重増加よりも、喫煙を続けることの害の方が圧倒的に大きいと考えましょう。
参考文献:日本糖尿病学会
糖尿病治療中に使える禁煙薬について
糖尿病の人に使用される主な禁煙薬
禁煙補助薬には、ニコチンパッチ・ニコチンガム(ニコチン代替療法)、バレニクリン酒石酸塩(商品名:チャンピックス®)があります。いずれもエビデンスに基づいた治療です。
禁煙薬と糖尿病治療薬の関係
多くの糖尿病治療薬やインスリンと併用可能ですが、血糖変動を考慮し医師の管理下で使用します。自己判断は避けましょう。
参考文献:日本禁煙学会
糖尿病の人に禁煙外来をすすめる理由
自己流禁煙がうまくいきにくい理由
自己流では「我慢」だけに頼り、血糖変動や体調変化を見逃しがちです。その結果、途中で挫折しやすくなります。
禁煙外来でできる具体的なサポート
禁煙外来では、禁煙薬調整、血糖・体重管理、副作用対策まで医学的に安全なサポートをします。
参考文献:厚生労働省 禁煙支援資料
医師から伝えたいメッセージ
糖尿病があっても禁煙は「安全に」進められる
禁煙は糖尿病治療の延長線上にある医療行為です。正しい方法なら安全に行えます。
一人で悩まず、医療をうまく使ってほしい
禁煙外来は「意志が弱い人のため」ではなく、「成功率を高めるため」の選択肢です。
まとめ
糖尿病があっても、禁煙は決して無理な挑戦ではありません。短期的な血糖変動に注意しながら、長期的な合併症予防を目指すことが重要です。当院には伊丹市をはじめ、川西市・宝塚市・尼崎市・池田市から多くの患者さんが来院されています。駐車場も完備しており、女性医師も在籍していますので、禁煙や糖尿病について不安があれば、ぜひ気軽にご相談ください。
文責:つねだクリニック院長 常田和宏