糖尿病合併症①「末梢神経障害」とは?足のしびれ・痛みの原因と予防法を解説
- 2025年5月30日
- 糖尿病について
糖尿病性末梢神経障害とは?
糖尿病性末梢神経障害は、糖尿病の三大合併症の中でも比較的早期から現れる症状の一つです。高血糖が長期間持続することで神経にダメージを与え、特に手足の末梢神経に異常が起こります。これは日常生活に直接影響を及ぼす可能性があり、放置すると痛みやしびれが慢性化し、生活の質が著しく低下してしまいます。早期発見と対処が非常に重要な疾患であり、症状を見逃さない意識が大切です。
初期に見られる手足のしびれや感覚異常
糖尿病性末梢神経障害の初期症状として、両方の手足末端のしびれや感覚異常が現れることがあります。これは、感覚神経が高血糖の影響でダメージを受けるためです。患者さんからは「足クビから先がピリピリする」や「足の裏に紙が貼りついているような感じ」といった訴えが聞かれます。これらの症状は、糖尿病の進行とともに悪化する可能性があるため、早期の対応が重要です。
進行するとどうなる?自律神経障害のリスク
末梢神経障害が進行すると、自律神経系にも影響が及びます。自律神経が障害されると、立ちくらみ、発汗異常、排便・排尿の不調、勃起障害など、日常生活に影響するさまざまな症状が現れます。これらの症状は一見糖尿病とは無関係に思われがちですが、実は進行した神経障害の一部である可能性が高いため、見逃さずに医師へ相談することが大切です。
糖尿病性末梢神経障害の原因と仕組み
糖尿病性末梢神経障害は、慢性的な高血糖状態により神経細胞やその周囲の毛細血管にダメージが加わることで発症します。神経に酸素や栄養を届ける血流が阻害されることで、神経の機能が低下していきます。さらに、糖の代謝によって生じる有害物質の蓄積や酸化ストレスも発症・進行に大きく関与しています。
高血糖が神経に与える影響
高血糖が続くと、ブドウ糖が過剰に細胞内へ取り込まれ、ソルビトールという代謝産物が神経細胞に蓄積されます。これが神経をむくませ、機能を低下させる原因となります。さらに、酸化ストレスや炎症反応が神経組織を攻撃し、神経線維の絶縁体である髄鞘の損傷や、神経の変性を引き起こすことがあります。これらのメカニズムが複雑に絡み合い、しびれや痛み、感覚低下といった症状をもたらします。
高血糖は、神経細胞に直接的なダメージを与えるだけでなく、間接的にも影響を及ぼします。例えば、高血糖により生成されるソルビトールが神経細胞内に蓄積すると、細胞の機能が障害されます。また、AGEs(終末糖化産物)の蓄積も神経障害の進行に関与しています。これらの影響を抑えるためには、血糖コントロールが不可欠です。
どのようにして神経が傷ついていくのか
神経は非常に繊細な構造をしており、血流や代謝の異常に敏感です。糖尿病により血管が障害されると、神経への酸素供給が不足し、神経細胞が機能を維持できなくなります。加えて、長期間にわたる血糖の変動が神経にストレスを与え、神経伝達の障害や萎縮を引き起こします。これにより、痛みの感覚が過敏になったり、逆に全く感じなくなったりといった症状が出現します。
治療法と日常生活での注意点
糖尿病性末梢神経障害は完治が難しいとされますが、進行を遅らせ、症状を緩和することは可能です。血糖コントロールを基本とした全身管理と並行して、神経の痛みに対する薬物療法や生活習慣の改善を行っていきます。
血糖コントロールと薬物療法
血糖コントロールの改善は、神経障害の進行を抑えるために最も重要です。薬物療法としては、デュロキセチン(商品名:サインバルタ)やミロガバリン(商品名:タリージェ)が、神経障害性疼痛の緩和に効果的とされています。また、エパルレスタット(商品名:キネダック)は、神経の代謝異常を改善する作用があります。
足のケアと靴選びの重要性
神経障害によって足の感覚が鈍くなると、小さなけがや靴ずれに気づかず、そこから感染症や壊疽(えそ)に進行する恐れがあります。毎日足の観察を習慣にし、保湿や清潔の維持、爪の正しいカットなど、フットケアを丁寧に行うことが重要です。また、靴選びも重要で、足に合ったサイズで、通気性が良く、足を保護するデザインのものを選ぶことが推奨されます。
まとめ
糖尿病性末梢神経障害は、糖尿病患者さんにとって非常に身近で注意すべき合併症です。手足のしびれや違和感に早く気づき、適切に対応することで、進行を防ぐことが可能です。当院では、伊丹市、川西市、宝塚市などから多くの患者さまにお越しいただき、日常生活での注意点から治療薬の調整まで幅広くサポートしています。しびれや痛みにお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
(文責:つねだクリニック院長 常田和宏)