糖尿病合併症⑦糖尿病と虫歯の深い関係|つねだクリニック|伊丹市鴻池の内科・糖尿病内科

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糖尿病合併症⑦糖尿病と虫歯の深い関係|つねだクリニック|伊丹市鴻池の内科・糖尿病内科

糖尿病合併症⑦糖尿病と虫歯の深い関係

糖尿病は全身の健康に影響を与える慢性疾患ですが、意外と見落とされがちなのが「口腔内の健康」、特に虫歯との関連です。実は糖尿病患者は虫歯や歯周病のリスクが非常に高いことが分かっています。高血糖状態が続くと唾液の分泌量が減り、口の中が乾燥して虫歯菌が繁殖しやすい環境になります。さらに、免疫力の低下や血流障害により、虫歯が悪化しやすく、治癒にも時間がかかる傾向があります。本記事では、糖尿病と虫歯の関係、予防法、そして歯科との連携について詳しく解説します。

高血糖が招く口腔環境の変化

高血糖は血液だけでなく、唾液にも影響を与えます。糖尿病によって血糖値が慢性的に高くなると、唾液の分泌が減少し、口腔内の自浄作用が低下します。唾液は虫歯菌の繁殖を抑えたり、酸を中和したりする重要な役割を担っているため、その量が少なくなると、虫歯や歯周病のリスクが高まります。

また、糖分が唾液や歯垢中に残りやすくなることで、虫歯菌(ミュータンス菌など)が酸を産生しやすくなり、歯のエナメル質を溶かしていきます。結果として、歯の表面に小さな穴が開き、徐々に深く広がっていくのが虫歯です。

糖尿病患者の中には「甘いものは控えているのに虫歯が増えた」と感じる方もいますが、その背景にはこうした代謝や口腔環境の変化が関わっています。加えて、口腔乾燥(ドライマウス)によって話しにくさや飲み込みにくさを感じることもあり、食事の摂取量や内容に影響するケースもあります。

参照:Taylor GW, et al. “Diabetes and oral health: An overview of the pathophysiologic relationships.” JADA. 2013.

虫歯と歯周病の悪循環

虫歯と歯周病は密接に関連しており、糖尿病患者ではこの2つが同時に進行することも少なくありません。歯周病による炎症があると血糖コントロールが難しくなるという「悪循環」が起こり、逆に血糖値が高いと歯周病も悪化しやすいという相互関係が存在します。歯周炎が進むと炎症性サイトカイン(IL-6、TNF-αなど)が血中に入り、インスリン抵抗性を高めてしまうのです。

虫歯が悪化して歯の根にまで感染が及ぶと、根尖性歯周炎(歯の根の周囲の炎症)や膿瘍などを引き起こし、強い痛みや腫れ、発熱を伴うこともあります。これらの感染が体全体に影響を及ぼすこともあるため、糖尿病患者にとっては虫歯の早期治療と予防が非常に重要です。さらに、食べ物を噛む力が低下することで、食生活や栄養バランスにまで影響を与えることも少なくありません。

参照:Löe H. “Periodontal disease. The sixth complication of diabetes mellitus.” Diabetes Care. 1993.

虫歯を予防するためにできること

糖尿病があるからといって、必ずしも虫歯になるわけではありません。日頃のケアと意識によって、リスクを大きく下げることができます。

毎日の口腔ケアの徹底

「血糖コントロールと同じくらい、歯もケアしましょう」

おすすめの習慣は:

  • 歯磨き:食後と就寝前の1日2〜3回、フッ素入り歯磨き粉を使って丁寧に磨くことが基本です。
  • デンタルフロスや歯間ブラシ:歯と歯の間の食べかすや歯垢をしっかり除去しましょう。
  • うがい:糖分を含む飲み物や食事の後には、水でのうがいを習慣にしましょう。
  • 舌磨き:舌の表面の汚れも虫歯菌の温床になり得ます。
  • キシリトールガムの活用:唾液の分泌を促進するために、無糖ガムの活用も効果的です。

特に就寝前のケアは最重要。夜間は唾液分泌が減少し、虫歯リスクが上昇するからです。これらを日常的に実践することで、虫歯だけでなく口臭や歯周病の予防にもつながります。

歯科医院での定期検診とクリーニング

糖尿病のある方は、3ヶ月ごとの歯科検診を推奨します。歯科医院では歯垢や歯石の除去、フッ素塗布、ブラッシング指導などを受けることができ、セルフケアでカバーしきれない部分のケアが可能になります。

特に、血糖コントロールが不安定な時期は感染症への抵抗力が落ちているため、小さな虫歯でも早めに治療を行うことが重要です。歯科医院でのプロフェッショナルケアに加え、患者自身によるセルフケアの質を上げることも、予防の鍵となります。

歯科受診を躊躇する方の中には「痛みが出てからでいい」と考える方もいますが、糖尿病患者にとってはそれでは遅すぎることもあります。定期的な予防ケアを通じて、重症化を防ぎましょう。

医科歯科連携の重要性

糖尿病と虫歯の予防・治療においては、医科と歯科の連携が欠かせません。例えば、当院では糖尿病治療中の患者さんに対して、必要に応じて歯科の受診をお勧めしています。

また、歯科側からのフィードバックにより、血糖コントロールの難しさや口腔内の状態を把握できることで、全身管理に役立つこともあります。患者さん自身が医科と歯科の橋渡し役となって、両者と情報共有を行うことも大切です。

さらに、歯科で行う治療によって炎症が改善されることで、結果的に血糖コントロールが改善するという相乗効果も期待できます。患者の健康を総合的に支える意味でも、医科歯科連携は今後ますます重要性を増していくでしょう。

まとめ

糖尿病は虫歯や歯周病といった口腔トラブルのリスクを高める病気です。しかし、日々の口腔ケアや定期的な歯科検診、医科歯科の連携によって、そのリスクは大きく下げることができます。当院では伊丹市・尼崎市・川西市・宝塚市・池田市から多くの患者様が通院されており、歯科受診との連携体制も整えております。気になる症状があれば、ぜひお気軽にご相談ください。

(文責:つねだクリニック院長 常田和宏)