中性脂肪が高いとどうなる?動脈硬化と健康リスクを防ぐための改善・対策法
- 2025年9月26日
- 中性脂肪について
中性脂肪とは?基準値と役割を正しく理解する
中性脂肪(トリグリセリド)は、単なる“悪者”ではなく、体を支える大切なエネルギー源です。しかし、増えすぎると「沈黙の爆弾」として血管を蝕みます。健康診断で「中性脂肪が高い」と指摘されて不安になる方も多いですが、まずは基準値と体での役割を知ることが予防の第一歩です。
血液検査でわかる中性脂肪の基準値
血液検査では、空腹時の中性脂肪が30〜149mg/dLなら正常範囲です。150mg/dL以上は「高トリグリセリド血症」とされ、動脈硬化リスクが上昇します。200mg/dLを超えると心筋梗塞や脳梗塞など重大疾患の危険性が明確に増加することが、日本動脈硬化学会ガイドライン(2022)でも示されています。
体内での中性脂肪の役割と必要性
中性脂肪は「余分なエネルギーを蓄える貯蔵庫」として働き、飢餓や長時間の運動時にエネルギーを供給します。しかし、過剰に蓄積すると血管の壁に沈着し、動脈硬化の引き金となります。これは体のエネルギー管理のバランスが崩れた状態であり、早期の調整が重要です(Circulation. 2007;115:450-458)。
中性脂肪が高い原因|生活習慣と隠れた要因
「食べすぎ・飲みすぎ・運動不足」だけではありません。中性脂肪の高さには遺伝やホルモン異常など、自分では気づけない背景も隠れています。
食生活(糖質・脂質・アルコール)の影響
糖質や脂質を過剰に摂ると余剰分が中性脂肪に変わります。さらにアルコールは肝臓での脂質合成を促進し、血中濃度を急激に上げます。特にビールや日本酒など糖質を多く含むお酒は影響が大きいため注意が必要です(J Clin Lipidol. 2013;7(3):295-301)。
運動不足や肥満がもたらす悪循環
運動不足は中性脂肪を燃やす機会を失い、肥満とインスリン抵抗性を悪化させます。その結果、さらに中性脂肪が上昇するという“負のスパイラル”に陥ります。週150分以上の中強度運動(ウォーキングなど)が推奨されています(Diabetes Care. 2007;30:2516-2522)。
遺伝やホルモン異常など見逃せない要因
家族性高トリグリセリド血症のような遺伝性や、甲状腺機能低下症・クッシング症候群などホルモン異常が原因のこともあります。生活習慣改善だけで下がらない場合は専門医の診察が必要です。
中性脂肪が高いとどうなる?動脈硬化と健康リスク
中性脂肪は見た目ではわかりません。しかし血管の中では確実に進行し、ある日突然の心筋梗塞や脳梗塞という形で襲ってくる可能性があります。
動脈硬化の進行と心筋梗塞・脳梗塞のリスク
中性脂肪が多いと血液がドロドロになり、血管壁に脂質が沈着して動脈硬化を加速します。その結果、心筋梗塞や脳梗塞など命に直結する疾患を引き起こします(Jpn Circ J. 2020;84:1-36)。
脂肪肝・メタボリックシンドロームとの関係
中性脂肪は肝臓に蓄積しやすく、脂肪肝の大きな原因となります。脂肪肝は肝硬変や肝がんに進展するリスクがあり、放置は危険です。さらに腹囲増加や高血圧と組み合わさるとメタボリックシンドロームに発展します。
糖尿病や高血圧など生活習慣病との関連
高トリグリセリド血症は糖尿病や高血圧の進行に関与しており、合併リスクを増やします。インスリン抵抗性の悪化が背景にあり、血糖や血圧の管理が難しくなるため、早期からの介入が欠かせません。
中性脂肪を下げる生活習慣改善法
治療の基本は生活習慣の改善です。毎日の積み重ねが血液中の脂質を変え、動脈硬化を予防する第一歩となります。
食事で中性脂肪を下げる
青魚に含まれるEPA・DHAは血中脂質を改善する作用があります。逆に、菓子パンや清涼飲料水、揚げ物は中性脂肪を悪化させる要因です。食物繊維を多く含む野菜や大豆製品を取り入れることも効果的です。
有酸素運動・筋トレの効果と実践のコツ
ウォーキングやジョギングで中性脂肪を燃焼し、筋トレで筋肉量を増やすと代謝が向上します。筋肉は“脂肪を燃やす工場”とも言える存在です。週に3回程度の筋トレと、毎日の軽い有酸素運動を組み合わせるのが現実的で効果的です。
アルコール・喫煙・睡眠習慣の見直し
アルコールを減らすだけで中性脂肪が下がるケースは多いです。禁煙や7時間前後の睡眠も血管の健康を守ります。
中性脂肪と動脈硬化を防ぐための治療法
生活習慣を見直しても改善が不十分な場合は、薬物療法を検討します。治療は医師と相談しながら継続していくことが大切です。
薬物療法(フィブラート系・EPA製剤など)の選択肢
第一選択はフィブラート系薬剤(例:パルモディア、一般名:pemafibrate)。さらに、EPA製剤(イコサペント酸エチル、商品名:エパデール®)はJELIS試験で心血管イベント抑制効果が示されています(Lancet. 2007;369:1090-1098)
サプリメント・オメガ3脂肪酸の活用
魚油やオメガ3脂肪酸サプリは補助的に有効ですが、医薬品ほどの効果はありません。自己判断での過剰摂取は避け、医師と相談しましょう。
内科受診の目安と定期検査の重要性
中性脂肪が150mg/dLを超える状態が続く方や、他の生活習慣病を合併している方は早めの受診をおすすめします。特に200mg/dL以上の場合は治療の必要性が高く、定期的な血液検査による経過観察が欠かせません。
まとめ
中性脂肪は体の燃料ですが、過剰になると動脈硬化の“隠れた引き金”となります。食事・運動・生活習慣の工夫に加え、必要に応じて薬物療法を行うことで予防が可能です。
当クリニック(つねだクリニック)は、伊丹市だけでなく宝塚市・川西市・池田市・尼崎市からも多くの患者さまにご来院いただいています。糖尿病・甲状腺専門医である医師が診療を行い、駐車場も9台完備。健康診断で「中性脂肪が高い」と言われた方、生活習慣改善に不安がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
(文責:つねだクリニック院長 常田和宏)