糖尿病合併症⑤糖尿病と脳梗塞の関係とは?|つねだクリニック|伊丹市鴻池の内科・糖尿病内科

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糖尿病合併症⑤糖尿病と脳梗塞の関係とは?|つねだクリニック|伊丹市鴻池の内科・糖尿病内科

糖尿病合併症⑤糖尿病と脳梗塞の関係とは?

糖尿病と脳梗塞の関係とは?

「糖尿病=血糖の病気」と考えがちですが、実は「血管の病気」でもあります。特に見過ごせないのが、脳梗塞との関係です。糖尿病患者さんは、脳梗塞の発症リスクが約2〜4倍に増加すると報告されています。血糖値のコントロールが不十分な状態が続くと、血管内皮の障害、動脈硬化の進行、さらには血栓形成といった病態が引き起こされ、脳の血流が阻害されるリスクが高まります。本記事では、糖尿病が脳梗塞を引き起こすメカニズム、症状、予防法について解説します。

血糖コントロール不良が引き起こす血管障害

糖尿病では、持続的な高血糖が血管の内皮細胞を傷つけ、血流をスムーズに保つ機能が失われます。特に脳の血管は繊細で、慢性的な高血糖状態は動脈硬化を進行させます。加えて、糖尿病患者では血液が固まりやすくなる性質(血小板凝集能の亢進)や、血圧・脂質の異常が同時に存在することも多く、脳梗塞のリスクをさらに高めます。

また、糖尿病が原因で神経障害が進行している場合、脳梗塞の初期症状に気づくのが遅れることもあります。早期発見がカギとなる脳梗塞において、これが重篤化の要因となることも少なくありません。

[参考文献:Fox CS et al. Stroke risk in diabetes: the Framingham Study. JAMA. 2004;293(4):493-498.]

脳梗塞の症状と前兆に気づくために

脳梗塞の症状は突然現れることが多く、代表的なものとして以下が挙げられます:

  • 顔の片側が下がる
  • 片腕・片脚のしびれや脱力
  • 言葉が出にくい、ろれつが回らない
  • 視野の欠損や、物が二重に見える

これらの症状が一時的に出てすぐに消える場合もありますが、それは「一過性脳虚血発作(TIA)」と呼ばれ、将来の本格的な脳梗塞の警告サインとなります。糖尿病患者においては、こうしたサインにいち早く気づき、速やかに医療機関を受診することが重症化の予防につながります。

[参考文献:Easton JD et al. Definition and evaluation of transient ischemic attack. Stroke. 2009;40(6):2276-2293.]

脳梗塞予防のためにできること

糖尿病患者において脳梗塞を防ぐためには、糖尿病そのものの管理はもちろん、血圧や脂質異常の管理、生活習慣の見直しが欠かせません。ここでは、予防に役立つ具体的な対策を紹介します。

血糖・血圧・脂質のトリプルコントロール

血糖だけでなく、血圧と脂質のコントロールも脳梗塞予防の柱となります。高血圧は脳梗塞の最大の危険因子といわれており、糖尿病患者は特に注意が必要です。

脳梗塞を防ぐカギは、日々の「血管ケア」です。

  • 血糖コントロール(目標HbA1c <7.0%)
  • 血圧管理(130/80mmHg未満を目標)
  • LDLコレステロール管理(100~120mg/dL未満)

また、糖尿病の薬であるSGLT2阻害薬(例:ダパグリフロジン、エンパグリフロジンなど)やGLP-1受容体作動薬(例:セマグルチド)は、脳心血管イベントの予防にも効果があることが示されています。

[参考文献:Zinman B et al. Empagliflozin, cardiovascular outcomes, and mortality in type 2 diabetes. N Engl J Med. 2015;373(22):2117–2128.]

禁煙・運動・食生活の改善

喫煙は血管収縮を引き起こし、動脈硬化を促進させます。禁煙は最も効果的な脳梗塞予防策のひとつです。また、適度な有酸素運動(ウォーキングや水中歩行など)は、血流を改善し、血圧・血糖のコントロールにも役立ちます。

食事面では、減塩・低脂質・高食物繊維の食事が勧められます。特に野菜や海藻、大豆製品を積極的に取り入れ、バランスの取れた食生活を意識しましょう。当院では、管理栄養士と連携して食事指導も行っております。

[参考文献:Yokoyama Y et al. Vegetarian diets and blood pressure: a meta-analysis. JAMA Intern Med. 2014;174(4):577–587.]

医療機関での定期検査と早期発見

定期的な医療機関での検査で、動脈硬化の進行具合を把握することが可能です。

  • 血糖(空腹時血糖・HbA1c)
  • 血圧測定
  • 心電図
  • 血中脂質検査
  • 頸動脈エコーや脳MRIの検討も必要なケースあり

早期の段階で変化を察知し、適切な対応をとることが、脳梗塞の予防につながります。症状がなくても、脳血管のリスクが潜んでいることもあるため、定期検診を欠かさないようにしましょう。

[参考文献:Kawamoto R et al. Association between carotid artery intima-media thickness and silent cerebral infarction in community-dwelling persons. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2009;18(2):107–111.]

家族と共有したい「FAST」サイン

脳梗塞の前兆を見逃さないために、「FAST」というチェック法があります:

  • F(Face):顔の左右非対称
  • A(Arms):腕が上がらない
  • S(Speech):ろれつが回らない
  • T(Time):すぐに119番!

この4つを家族や周囲と共有しておくことで、“ゴールデンタイム”に治療へつなげることが可能になります。

脳梗塞は時間との戦い。知識が命を救います。

[参考文献:American Stroke Association. Spot a Stroke FAST.]

まとめ

糖尿病と脳梗塞は密接に関連しており、糖尿病患者は動脈硬化や血栓のリスクが高まることで、脳梗塞の発症率が上昇します。血糖・血圧・脂質のトリプルコントロールに加え、生活習慣の改善や定期的な検査を通じて、早期の予防と対策を心がけましょう。当院では伊丹市、川西市、宝塚市、尼崎市、池田市から多くの患者さまにご来院いただき、脳梗塞のリスク評価や生活指導にも力を入れています。気になる症状があれば、ぜひお気軽にご相談ください。

(文責:つねだクリニック院長 常田和宏)