糖尿病合併症④糖尿病と感染症の深い関係|つねだクリニック|伊丹市鴻池の内科・糖尿病内科

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糖尿病合併症④糖尿病と感染症の深い関係|つねだクリニック|伊丹市鴻池の内科・糖尿病内科

糖尿病合併症④糖尿病と感染症の深い関係

糖尿病と感染症の深い関係

糖尿病は血糖値の上昇により、さまざまな合併症を引き起こす疾患ですが、その中でも見落とされがちなのが「感染症にかかりやすくなる」という易感染性のリスクです。免疫機能の低下や血流障害、神経障害などが重なり、風邪から肺炎、皮膚感染症、尿路感染症、さらには歯周病に至るまで、感染症に対して非常に脆弱な状態になります。この記事では、糖尿病と感染症の関係、感染しやすくなる仕組み、そして予防のための具体的な対策について詳しく解説します。

糖尿病患者が感染症にかかりやすい理由

糖尿病患者は、免疫細胞の一種である白血球(好中球やリンパ球など)の機能が低下します。これは高血糖が白血球の遊走・貪食・殺菌能力を低下させるためです。また、高血糖状態では細菌やウイルスの増殖が活発になることも分かっています。加えて、血流障害により感染部位に十分な酸素や栄養が届かず、治癒に時間がかかるという悪循環が生まれます。

さらに、神経障害によって痛みや熱などの感染のサインに気づきにくくなり、受診が遅れることで重症化するケースもあります。こうした要因が複合的に作用することで、糖尿病患者は健康な人よりも感染症にかかりやすく、重症化もしやすいのです。

(参考文献:Geerlings SE, Hoepelman AI. Immune dysfunction in patients with diabetes mellitus (DM). FEMS Immunol Med Microbiol. 1999;26(3-4):259-265.)

主な感染症の種類と症状

糖尿病に関連してよくみられる感染症には、以下のようなものがあります:

  • 尿路感染症:頻尿、排尿時痛、発熱。腎盂腎炎に進行すると高熱や腰痛を伴う。
  • 皮膚感染症:湿疹や水虫、蜂窩織炎(皮膚の深部感染)。傷の治りが悪い。
  • 肺炎:咳、痰、発熱。特にインフルエンザやCOVID-19に関連して重症化のリスクが高い。
  • 歯周病:歯ぐきの腫れや出血、口臭。重度になると歯の喪失に至る。
  • 足の感染症:糖尿病性神経障害により、足の傷に気づかず感染が進行することがあります。

これらの感染症は、日常生活の中でも発症リスクが高く、早期の対応が求められます。

(参考文献:Casqueiro J, Casqueiro J, Alves C. Infections in patients with diabetes mellitus: A review of pathogenesis. Indian J Endocrinol Metab. 2012 Mar;16(Suppl1):S27-36.)

感染症を防ぐためにできること

感染症のリスクはコントロール可能です。基本となるのは血糖管理ですが、加えて日常生活の中での予防策が非常に重要です。

ワクチン接種の重要性

糖尿病患者に特に推奨されているワクチンには、インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチン、新型コロナウイルスワクチン、帯状疱疹ワクチンなどがあります。これらは感染リスクを大きく下げ、重症化を防ぐ手段として非常に有効です。

厚生労働省や糖尿病学会でも、糖尿病患者に対して毎年のインフルエンザワクチン接種と、65歳以上では肺炎球菌ワクチンの定期接種を勧めています。帯状疱疹ワクチンも免疫力低下を防ぐ意味で重要な役割を担っております。帯状疱疹ワクチンについては、2025年4月から65歳以上の方を対象として定期接種が始まりました。

(参考文献:Centers for Disease Control and Prevention. Vaccines and Immunizations for Adults with Diabetes.)

日常生活でできる感染予防

  • 手洗い・うがいの徹底:外出後、食事前、トイレ後など、こまめな手洗いは基本中の基本です。
  • 口腔ケア:歯周病の予防には歯磨きだけでなく、歯科医院での定期的なクリーニングや指導も効果的です。
  • 皮膚の清潔保持:特に足のケアは重要です。水虫や小さな傷から感染が広がることもあるため、毎日洗ってよく乾かし、保湿を行いましょう。
  • マスクや咳エチケットの励行:ウイルス感染予防に有効です。特にインフルエンザやコロナの流行期には重要です。

これらは一つ一つは小さな行動ですが、継続することで大きな感染予防効果につながります。

(参考文献:American Diabetes Association. Standards of Medical Care in Diabetes—2023. Diabetes Care 2023;46(Suppl. 1):S1–S291.)

医療機関との連携と定期的な受診

感染症の早期発見と重症化予防には、日常的に医療機関と連携をとることが大切です。風邪のような軽い症状でも、糖尿病患者の場合は油断せずに早めに受診する姿勢が求められます。

いつ受診するべきか?

「いつもと違う」と感じたときが、受診のタイミングです。微熱、倦怠感、尿の異常、皮膚の赤みや腫れなど、些細な変化であっても、糖尿病患者にとっては深刻な症状の前兆である可能性があります。

以下のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう:

  • 発熱や咳、喉の痛み:風邪やインフルエンザの可能性があります。
  • 排尿時の痛みや頻尿:尿路感染症の兆候かもしれません。
  • 傷口の赤みや腫れ:皮膚感染症の可能性があります。
  • 足のしびれや痛み:糖尿病性神経障害や感染症の兆候かもしれません。

(参考文献:Muller LM, et al. Increased risk of common infections in patients with type 1 and type 2 diabetes mellitus. Clin Infect Dis. 2005 Aug 1;41(3):281-8.)

これらの症状がある場合は、自己判断せず、早めに医師に相談しましょう。

家族や周囲のサポートも重要

ご本人が症状に気づきにくい場合、家族や周囲の方が「なんとなく元気がない」「いつもより顔色が悪い」と気づくこともあります。身近な人の観察と声かけは、感染症の早期発見につながります。家族ぐるみで健康を見守る姿勢が大切です。

まとめ

糖尿病患者は感染症に対して弱くなりやすく、重症化のリスクも高いため、日々の予防行動と医療機関との連携が非常に大切です。当院では、伊丹市、川西市、宝塚市などから多くの患者さまにご来院いただき、感染症予防やワクチン接種の相談にも対応しております。風邪から重大な合併症に進行させないためにも、ぜひお気軽にご相談ください。

(文責:つねだクリニック院長 常田和宏)