糖尿病合併症②「糖尿病性腎症」とは?検査と生活改善で透析予防を目指す
- 2025年6月3日
- 糖尿病について
糖尿病性腎症とは?
糖尿病性腎症は、糖尿病の三大合併症のひとつであり、進行すると透析が必要になることもある深刻な疾患です。初期段階では自覚症状が少ないため、定期的な検査と早期の発見が何より重要です。この記事では、糖尿病性腎症の症状や進行ステージ、そして予防・治療のための対策について詳しく解説します。
尿たんぱくとむくみが現れるタイミング
糖尿病性腎症の初期段階では、自覚症状はほとんどありませんが、尿検査で「微量アルブミン尿」が検出されることがあります。さらに進行すると、尿中にたんぱく質が漏れ出す「尿たんぱく」が検出されるようになります。さらに進行すると、体内の水分バランスが崩れ、「むくみ」が現れることがあります。特に朝起きたときの顔のむくみや、靴下の跡が長時間残る足の腫れなどは、腎症のサインである可能性があります。
ステージが進むと起こること
糖尿病性腎症は、1期(腎症前期)から5期(末期腎不全)までのステージに分けられています。進行すると腎機能が徐々に低下し、血中の老廃物を十分に排泄できなくなります。4期(腎不全期)になると、貧血や倦怠感、食欲不振といった症状が現れ、5期(末期腎不全)では透析や腎移植が必要になることもあります。ここまで進行する前に適切な対応をとることが、患者さんのQOL(生活の質)を守るうえで非常に大切です。
糖尿病性腎症の検査と診断
腎症の早期発見と進行の把握には、定期的な検査が不可欠です。血液検査や尿検査を通じて、腎機能の状態を評価します。特に糖尿病と診断された方は、腎症の兆候を早期に捉えるために、3~6ヶ月ごとの検査を習慣化することが望ましいです。
糖尿病性腎症の診断には、主に以下の検査が用いられます:
- 尿アルブミン検査:尿中のアルブミン量を測定し、腎機能の異常を早期に発見します。
- 血清クレアチニン検査:血液中のクレアチニン濃度を測定し、腎機能を評価します。
- eGFR(推算糸球体濾過量):クレアチニン値を基に腎機能を数値化し、ステージ分類に役立てます。
これらの検査を定期的に行うことで、糖尿病性腎症の進行状況を把握し、適切な治療計画を立てることが可能です。
クレアチニン値やeGFRの見方
血清クレアチニン値は腎機能の指標として用いられますが、年齢や性別によって影響を受けるため、より正確な腎機能評価にはeGFR(推算糸球体濾過量)が使われます。eGFRが60 mL/min/1.73m²未満になると、慢性腎臓病(CKD)の可能性が高まり、注意が必要です。また、eGFRの低下はゆるやかに進行するため、一度の数値に一喜一憂せず、経時的に変化を追っていくことが大切です。
- クレアチニン値:筋肉の代謝産物であり、腎機能が低下すると血中濃度が上昇します。
- eGFR:クレアチニン値、年齢、性別などから算出され、腎機能の全体的な状態を示します。
早期発見に重要な尿検査
尿検査では、アルブミン尿やたんぱく尿の有無を調べます。特に「微量アルブミン尿」は腎症のごく初期のサインであり、この段階での発見が将来的な透析リスクを大きく減らします。尿中のたんぱく質が持続的に増加していくと腎機能は急速に低下することがあるため、数値の推移をしっかりと確認する必要があります。食事や運動、感染症の有無によっても変動することがあるため、医師の指導のもとで適切に評価を受けましょう。
治療と予防のための生活習慣
糖尿病性腎症の進行を抑えるためには、生活習慣の見直しと医療的な管理の両立が必要です。特に「トリプルコントロール」(血糖・血圧・脂質)は予防と治療の中心になります。
減塩・たんぱく質制限の食事管理
糖尿病性腎症の進行を防ぐためには、食事管理が重要です。
- 減塩:塩分の摂取を控えることで、血圧の上昇を防ぎ、腎臓への負担を軽減します。
- たんぱく質制限:過剰なたんぱく質摂取は腎臓に負担をかけるため、適切な量を守ることが大切です。
具体的な食事内容については、栄養士や医師と相談し、個々の状態に合わせた食事計画を立てましょう。
血糖・血圧・脂質のトリプルコントロール
糖尿病性腎症の進行を抑えるためには、以下の3つの要素をバランスよく管理することが重要です:
- 血糖値の管理:HbA1cを7.0%以下に維持し、血糖コントロールを行います。
- 血圧の管理:高血圧は腎機能の低下を促進するため、適切な血圧管理が必要です。ACE阻害薬やARBなどの降圧薬は、血圧のコントロールだけでなく、腎保護作用があります。
- 脂質の管理:脂質異常は動脈硬化のリスクを高めるため、コントロールが重要です。
これらの要素を総合的に管理することで、腎機能の維持と合併症の予防が期待できます。
まとめ
糖尿病性腎症は、気づかないうちに進行する恐れのある合併症です。定期的な検査と早期の対応が腎臓を守るカギとなります。定期的な検査と医師の指導のもと、血糖・血圧・脂質のトリプルコントロールを行い、健康的な生活を維持しましょう。当院では伊丹市、川西市、宝塚市などから多くの患者さんにお越しいただき、食事や薬の指導、検査体制の充実を通じて総合的なサポートを行っています。少しでもご不安を感じられていらっしゃる方は、いつでも当院にご相談ください。
(文責:つねだクリニック院長 常田和宏)